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Vol.100(6/19)

■vol.101 (2002年6月26日発行)
【杉山 茂】八つ当たりの的にレフェリーの“質”
【中村敏雄】敗因の決め方
【早瀬利之】タイガー・ウッズ人気に悲鳴


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◇八つ当たりの的にレフェリーの“質”
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

敗れた国のマスコミは、なりふりかまわぬ八つ当たり状態、と経験豊かなジャーナリストに聞いてはいた。

ワールドカップの報道は、4ヶ月前のソルトレークシティー冬季オリンピックでアメリカがのぞかせた“愛国報道”など、モノの数ではないほどの「自国寄り」だ。

困ったことに、今回は判定の微妙さから八つ当たりのターゲットに、レフェリー群が据えられてしまった。

ミスジャッジを責めているうちは「それがサッカー」「ホームアドヴァンテージはつきもの」といった声も聞かれたが、無責任な"陰謀"説がささやかはじめると、話は違ってくる。

実は、レフェリングの水準については、心配がなかったわけではない。

国際サッカー連盟(FIFA)のヨセフ・S・ブラッター会長は、6月15日横浜での記者会見で次のように語っているのだ。

『大会全般のレフェリーのレベルへの評価は、終了後に専門委員会が行う。この時点で私が言うべきは、プロフェッショナル水準の大会でのレフェリーに、課題があり欠陥があるとすれば、それは主審ではなく、副審の問題のような気がする。副審がより正確にピッチ内外の状況を判断、オフサイドかどうかの判断を降せるポジションをとれるなど、改善しなくてはならない。』

この時はまだ、決勝トーナメント(ベスト16)が始まっていない。それでも、会長は“懸念すべき状況”を察していたと思える。

イタリアがつまずき、スペインが敗れると八つ当たりは、レフェリング一点にしぼられ、イタリアのテレビ局は「“誤審”で我が国が敗れたため、このあとの放送によるスポンサー(広告)収入は減ってしまった。どうしてくれる?」と騒ぐ始末だ。

スローモーションビデオのめざましい画質向上で、98年大会あたりから、ゴール前の攻防のぶつかり合いが、迫力を伴って伝えられている。

サッカーが「足のスポーツ」におさまらず、凄まじいまでのユニホームの引っ張り合いで「腕のスポーツ」「手のスポーツ」なことも映(うつ)し出された。

今回は、4年前よりさらにカメラ台数が増え、この部分や、オフサイド描写の"鮮明度"は高まっている。それはファンの過熱をいっそう煽るものでもある。

レフェリーの質が極上でなければ、テレビカメラに"対抗"はできない。その点で、イタリアのテレビ局が、巨額の放送権料の対価として、競技の質だけではなく、ワールドカップの総ての質に批判のホコサキを向けようとしているのなら、この八つ当たりの底流は、私にはよくわかる――。 

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◇敗因の決め方
(中村敏雄/元広島大学教授)

『サッカーは何が起こるかわからないスポーツ』と前日本代表チームの監督、岡田氏が述べ、それを証明するかのように、鹿島アントラーズの総監督ジーコ氏が決勝トーナメントに残った16チームの中で最弱と評したトルコに日本は敗れた。

その原因を岡田氏は「ある選手のミス」と語り、忠鉢信一氏も「自陣左サイドで球を持ったDF中田浩二が、トルコにパスを渡してしまった。何とかその場はしのいだが相手のCKに・・・」と指摘し、このCKに対する「マークの不徹底も重なって、ヘディングシュートを決められた」のが敗因と金重秀幸氏が述べている(朝日新聞、6月19、20日)。

だが、これらの指摘は『何が起こるか・・・』の主旨と一致しないし、『何とかその場はしのいだ』ことで中田選手の『トルコにパス』というミスプレーの事後処理は終わったのではないだろうか。

『サッカー選手であることを辞めた人間』という作家の横田創氏が次のように述べている(「ユリイカ」6月号)。

『私のところにボールが飛んでくると、トラップが大きくて敵のダイレクトになるか、後ろにそらしてタッチラインを割るか、そこを何とかクリアしても、前を向き、目の前にいるのがキーパーだけだったと分かった途端に、体が硬直して、ドリブルしている自分につまずき、転んでボールを膝で弾いて、実にきれいなバックパスを相手のゴールキーパーに進呈する』

だから、横田氏はサッカー選手をやめたのだろうが、しかし、これと同じようなミスプレーをこのワールドカップの期間、われわれはどれほど見て、どれだけがっかりしたことだろう。

前述の中田選手のプレーの直後にあったFWの選手のトラップが、もう1メートル足もとに近ければ、相手バックスにピッチの外へ蹴り出されず、ゴールへ蹴りこめたかも知れないという場面もあった。このトラップ・ミスは、あるいは、FKをゴールポストに当てたのは、敗因と無関係なのだろうか。

世界のトップ・レベルのプレイヤーが集まった試合でこれほどトラップ・ミスやパスミスが多いのに驚くが、しかし、サッカーはボールを足で扱うため、もともとミスプレーに寛容で、バレーボールやバスケットボールならすぐにでも代表から降ろされかねない、目標より数メートル離れたところへのパスでも、その程度は誤差の範囲とでも言いたげな雰囲気がある。

そして、このような寛容や雰囲気に共感できる立場から言えば、「自陣左サイド」のパスミスを敗因と決めつけることには同意できないし、それは「何が起こるか・・・」とも矛盾するように思うのである。

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◇タイガー・ウッズ人気に悲鳴
(早瀬利之/作家)

先日、アメリカから帰国したゴルフ雑誌の記者が、「これじゃ俺たちは全米オープンも全英オープンも取材に行けなくなる」と嘆いた。

今年の全米オープン開催地近郊のホテルが、1泊200〜300ドルにハネ上がって、一週間で2,500ドル(約28万円)も払ったというのがその理由だ。これはチップを入れての支払い総額だが、その他食事代も値上げされ、一日に使った平均総経費は400ドル(48,000円)と呆れ返っていた。

原因は「タイガー・ウッズの人気に便乗したアメリカ商法」の阿漕なさにあるが、市場原理そのままの商法に、当の主催者USGAも手を焼いている。

このことは何もアメリカ東部だけの問題ではない。1週間30万人もの大ギャラリーが集まるアメリカ西部フェニックス戦でも、ホテルが軒並み値上がった。ぺブルビーチ周辺でもシングルユースのホテル1泊が200ドルの値上げ。この際に儲けようという腹だが、それにしても高い。

値上げの便乗はアメリカだけではない。今年、全英オープン開催地のエジンバラも、ホテル代は1泊150ポンドと高値がついた。通常は60ポンドである。2倍以上の値段。

ホテルだけではない。通常は1泊20ポンドのB&B(日本の民宿)までが3倍の60ポンド(12,000円)。交通機関も、スコットレールKKの1週間パスが2倍の200ポンドにハネ上がった。冬場は観光客ゼロのエジンバラでこのざま。「原因はタイガー・ウッズが出場するから、10万人のギャラリーがくるため、ホテル不足をきたす」ということである。
 
「今のアメリカはどうかしている。リッチなのは選手とキャディだけ。5億円トーナメントが軒並みなのは異常だ。こんなことなら、日本の借金を返してほしい」と友人は怒った。