ワールドカップ・サッカー開幕の約3ヶ月前に本大会でレフェリー、ラインズマンを務める審判が選抜される。FIFAから名誉ある指名を受けた国際審判員は、受諾後は自らを一層厳しく律することが求められる。商行為からの隔離。企業の広告に出演することも控えなければならない。レフェリーの公平性、独立性を担保しようとするFIFAの指導方針だ。 日本を代表するマスメディアであるNHKと朝日新聞がスポーツの商業活動をめぐって真っ向から対立した。驚き、あきれたのは私だけではあるまい。両社のメディアとしての社会的影響力の大きさに加え、問題視されたスポーツがラグビーだったからだ。日本ラグビーといえば商業活動とは一線を画し、ピュアなスポーツスピリットを追求してきた団体ではなかったか。 様々なスポーツにおいて選手個人を企業がサポートし、チームやクラブの経営にはスポンサーやテクニカル・サプライヤーの存在が欠かせなくなっている。イベント運営も同様だ。スポーツが入場料収入だけに依存して運営される時代はとっくに過ぎ去ってはいるが、今回のラグビーのケースは、大会やチーム協賛ではなくレフェリーが対象となったことが特徴だ。 テクノロジー優先の現代になっても、多くのスポーツで試合をさばくのは審判員だ。彼らの瞬時の判断が試合の流れを、そして勝敗を決するのである。公正、中立。審判に課せられる使命は重い。社会的影響力が大きいスポーツであれば、なお更だ。関係者は審判の立場や職責に最大の敬意を払うと同時に、その独立性の保全に万全を期するべきだろう。レフェリー・ジャージに企業ロゴが表示されただけで中立を云々するのは大げさかもしれないが、この際当事者には手続き論の是非で済ませるのではなく、スポーツの本質を見つめ直した上での真剣な議論を期待したい。 |