デロイト・アンド・トウシュ(英国)による2003/04年シーズンのサッカー・クラブ長者番付、Football Money Leagueが発表された。今回も1位に輝いたのはマンチェスター・ユナイテッド(マンU)。2位には前年度4位だったレアル・マドリードが躍進した。 8年連続で世界の最も裕福なクラブに選ばれたマンUの売上高(収入)は2億5900万ユーロ(約350億円)だが、前年比では3%の増収にとどまった。一方2位につけたレアルは、22.5%と大幅に売り上げを伸ばし、2億3600万ユーロ(約319億円)とマンUに肉薄。来シーズンには1位を窺える好位置をキープした。 コンサルティング・ファーム、デロイト社が調査を開始したのは1996/97年シーズン。当時上位20クラブの収入合計は12億ユーロで、これは今回調査における上位5クラブの合計金額とほぼ同額にすぎない(20クラブの収入合計は30億ユーロに達する)。言い換えれば、欧州の上位プロサッカー・マーケットは年率14%で成長してきたことになる。力強い成長をもっぱら支えてきたのはテレビマネー、特に各国の有料テレビ局の放映権料だ。 昨シーズンと同様、3位に続くのはACミラン。20位の中にイタリアのセリエAから5クラブがランクインした。イタリアの特徴はテレビ放映権収入への極めて高い依存率である。デロイトは収入源をマーケティング(含むライセンシング)、入場料、テレビ放映権の3つに区分しているが、イタリアのクラブ場合、放映権収入は全体の約60%にも達している。 マンU、レアルの収入構造は共にバランスが取れている。レアルの放映権は全収入の38%、マーケティング関連が36%、入場料は26%である。マンUはテレビが36%、マーケティングが28%。そして入場料収入が36%もあり、金額ベースでは9240万ユーロ(約125億円)になる。これはホーム・スタジアムに問題を抱えるユベントスの約5倍のスケールだ。 マンUに世界最高の入場料収入をもたらしているのは、紛れもなく強固なサポーター組織だ。2003/04年シーズンのホームゲームの平均入場者数は67500人。オールド・トラッフォード・スタジアムの公式収容力を上回り、常に満席なのだ。マンUは観客席を増設し収容能力を76000人まで高める計画だという。 レアルの好業績の理由はいくつかあるが、スペイン国内放映権のテレビ局との単独交渉(リーグではなく)による収入増と好調なマーチャンダイジング・セールスが特徴だ。デビッド・ベッカムに代表されるスター選手の人気がグッヅの売り上げに拍車をかけたのは明らかだ。 レアルがマンUを追い抜くためにはホームスタジアムのサンティアゴ・ベルナベウの集客力をさらに高める努力が必要だ。何故なら、10万人を超える収容能力に対し、2003/04シーズンの平均観客数は67600人と63%にすぎないからだ。 イングランドのスタジアムでひとつの観客席がシーズンを通じて稼ぎ出すチケット収益は約1000ポンド(約20万円)だ。と言うことは、例えばマンUの8500席の増設が竣工した暁には、それだけで850万ポンド(約17億円)の増収が期待できる計算になる。 クラブが成功し続けるためには収入源の多様化が必要だ。しかしスポンサーとテレビマネーをマーケティング努力により改善しても、肝心のサポーターが付いて来てくれなければバランスの取れた成長は望むべくもない。もちろん、サッカーチームとしてサポーターの期待に応えるパフォーマンスを続けることが絶対条件であることは言うまでも無いが。 |