ルール地方はライン川下流に広がるドイツ屈指の工業地域で、特に鉄鋼業が盛んなことで知られている。中心地のひとつ、デュイスブルグはデュッセルドルフの北に位置する人口約60万の中規模の都市だ。この地で今夏、第7回ワールドゲームズが開催される。 ワールドゲームズとは、簡単に言えばオリンピック種目でないオリンピック大会だが、とは言ってもオリンピックのようなテレビ・カバレッヂもなければ、巨額のスポンサーシップ・マネーも期待できない。しかし大会のたびに多くの参加選手を集め、観客の暖かい声援を受けて今日まで続いてきた。 地方行政とスポンサーをはじめとする企業、そして住民が一体となって成功に導いた秋田ワールドゲームズ2001は私たちの記憶に新しい。 1981年に第1回大会がアメリカのサンタクララで行われてから、2001年の秋田大会まで、1997年ラハティ(フィンランド)、93年ハーグ(オランダ)、89年カールスルーエ(ドイツ)と、主だった国際スポーツイベントと同様の4年毎に開催。但し第2回ロンドン大会を例外として、大都市で開催されたことはなかった。 国際ワールドゲームズ協会(IWGA)に加盟するスポーツ団体(IF)は現在32。デュイスブルグ大会では40競技が行われる計画だ。選手数は3500人、100カ国余から参加する。開会式にはIOCのジャック・ロゲ会長も出席するようだ。 オリンピック、特に夏季大会は開催のたびに規模の肥大化が批判の対象になってきた。そのため2002年にメキシコで開催された臨時総会の際、IOCは競技数の上限を28と決めた。同時に種目数を301、選手数10,500を上限とするとして、大会の規模にいわばキャップを課したのだ。 7月にシンガポールで開催されるIOC総会は、2012年の夏季オリンピックの開催都市が決定する場として注目を集めているが、同会議では現在の28競技に対する無記名の信任投票も行われる。2012年大会の競技として正式に認定されるためには、委員の半数を超える票を獲得することが条件だ。 今回の信任に向けてウェイティング・リストに名を連ねる競技団体は5つ。ゴルフ、ローラースケート、ラグビー、スカッシュそして空手である。これ等の競技がオリンピックに加わる「資格」を得るためには3分の2以上のIOC委員の票を獲得しなければならない。 その上で、もしも現28競技で得票が半数に達せず、2012年のプログラムから脱落する競技があった場合のみ、晴れてオリンピック競技として世に出られるのだ。 7月14日から24日、デュイスブルグで開催されるワールドゲームズではゴルフを除くローラースケート、ラグビー(7人制)、スカッシュ、空手が大会プログラムに含まれている。はたして、IOC総会での信任を勝ち得、胸をはって開会式に臨む競技団体は現れるだろうか。 ジャック・ロゲ会長は、IWGAとワールドゲームズがオリンピック・ムーブメントの推進において多大な貢献をしている、とエールを送る。事実IOCとIWGAは2000年の10月にさまざまな協働関係を構築するための覚書に調印し、ワールドゲームズの運営面における協力体制も敷かれてきた。さらに一歩進んで、より多くの競技、種目。より多くのアスリートがワールドクラスのステージでパフォーマンスできるよう、オリンピック大会とワールドゲームズの補完的開催が実現すればスポーツ界全体にとって素晴らしいのだが。 |