スポーツデザイン研究所
topページへ
topページへ
講演情報へ
オリジナルコラムへ
SPORTS ADVANTAGE
   「批評性」「評論性」「文化性」の視点からスポーツの核心に迫る
最新GALLARY

FIFAワールドカップ2006ドイツ大会 ファイナルドロー ライプチヒ/ドイツ

(C)photo kishimoto

FIFAワールドカップ
2006ドイツ大会
ファイナルドロー
ライプチヒ/ドイツ

 

SPORTS IMPACT
  オリジナルGALLERY
(C)photo kishimoto
vol.280-2(2005年12月 9日発行)
葉山 洋/マーケティング・コンサルタント

ホスト不在の国際試合

滝口 隆司/毎日新聞運動部記者
 〜Jリーグと早明戦から見えるもの〜

岡 邦行/ルポライター
 〜愛知大学野球連盟に加盟した中京女子大の「???」〜

筆者プロフィール
バックナンバーリスト
SPORTS ADVANTAGE
無料購読お申し込み
オリジナルコラムを中心に当サイトの更新情報、スポーツ関連講座やシンポジウム開催情報などを無料配信しています。今すぐご登録下さい。
申し込みはこちらから
ホームよりエントリー
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望
ホスト不在の国際試合
(葉山 洋/マーケティング・コンサルタント)

 12月11日から1週間。どこか不自然な国際スポーツイベントが日本で行われる。第2回FIFAクラブ世界選手権・トヨタカップである。

 ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オセアニア、北中米、南米から各大陸クラブ選手権のチャンピオンチームが日本に集結。世界ナンバーワン・クラブの栄誉をかけて闘うのだ!
日本のサッカーファンはこれを漫然と傍観することになるだろう。

 クラブ世界選手権(CWC)の第1回大会は、2000年にブラジルで開催された。ヨーロッパの裕福なクラブとのさまざまな軋轢に頭を痛めていたFIFAが、大きく網をかけることで指導権を握ろうとし、そこに巧みに喰い込んだ南米のエージェントが動いた。事業の結果は赤字であった。スポンサーもテレビ放映権もチケットも、いずれも見込み通りには販売できなかったのだ。

 FIFAは翌2001年にスペインで第2回大会を開催すると発表したが、スケジュールの過密化に欧州勢が反発。一方、日本の関係者もトヨタカップの存続にかかわる大問題としてFIFAに再考を求めた。結局、当時のFIFAのエージェント、ISLが多額の債務を負って倒産したことに関連付け、財務面の難しさを強調するかたちでスペイン開催は中止となった。FIFAが折れたのだ。アジア代表として参加が決まっていたジュビロ磐田をはじめとする各クラブにはFIFAから違約金が支払われた。

 そして今年、改めて第2回クラブ世界選手権が新トヨタカップとして日本で開催されようとしている。

 FIFAの主催大会は増加の一途をたどっている。1930年に第1回のワールドカップがウルグアイで開かれて以来、ワールドユース(1977年から)、アンダー17(1985年から)、フットサル(1989年から)、女子ワールドカップ(1991年から)、コンフェデレーションズ・カップ(1999年から)、女子アンダー20(2002年から)、そして今年は初のビーチサッカー世界選手権がブラジルのコパカバーナ海岸で開催された。

 これらの国際大会には共通の開催要件がある。ことさらサッカーに限ったことではないが、開催国のチームは必ず出場する、ということだ。開催国の代表が出場しない世界選手権など聞いたことがない。ブラジルでの第1回クラブ選手権には地元出場枠があったが、今回は廃止された。アジア・チャンピオンを逃したJリーグのクラブには出場権はないのだ。

 クラブ世界選手権の出場権を得たアジアの代表はサウジアラビアのアル・イテハドだ。一体日本人の何人がこのチームを知っているのだろう。

 言うまでもなく、開催地での期待感が膨れ上がり、チケットが売れ、メディアが盛り上げ、観客が興奮して、はじめてイベントは成功したと言えるのだ。そのためには地元のチームはどうしても出場しなくてはならない。あわよくば勝ち進んでほしい。

 そもそもサッカークラブは国より町を代表するものだ。その意味ではホームタウンからのアクセスに目をつぶって、一国で世界選手権を開催しようとすること自体問題がありそうだ。クラブの試合はホーム・アンド・アウェイが基本だからだ。

 2000年の第1回大会が開かれたサッカー王国ブラジルでさえ盛り上がりに欠けたという。メキシコ・オーストラリア戦のように1000人足らずしか観客が入らなかった試合さえあったという。南米代表としてのバスコ・ダ・ガマとコリンチャンス(開催国枠)の2チームが出場し、おまけに2チームとも決勝に残った大会だったにもかかわらず、である。

 ナショナルチームの大会と違い、クラブ世界選手権は毎年開催される。日本での開催は来年も約束されているようだが、外国のクラブチーム同士の闘いに軒先を貸す意味があるのか。ルールの改正を含め、大会のあり方自体を真剣に検討をすべきではないだろうか。


Copyright (C) Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。 →ご利用条件