トリノ冬季オリンピックの開幕まで50日を切った。代表選考の進展に従い、興味の範囲や対象も次第に具体化してくる。数ある競技種目の中で今回とりわけ話題になってきたのがフィギュアスケート、女子シングルだ。 大阪でのNHK杯、東京でのグランプリ・ファイナルともに、今までにはなかったレベルでマスメディアも注目した。この2大会では代表確定には至らず、23日からの日本選手権の結果に最終決定を委ねることになったようだ。 アルベールビル冬季オリンピックで伊藤みどりが3回転半ジャンプ(トリプル・アクセル)を見事に決め、銀メダルを獲得してから13年。いつの間に日本の女子フィギュアスケートはこれ程までにレベルアップし、層が厚くなったのだろうか。 女子フィギュアはオリンピック競技の中で最も華麗なスポーツのひとつだ。バレエにも通ずる氷上のパフォーマンスは技術やフィジカル面の優劣だけでなく、表情や指先の優雅さなどの表現力が大いにものを言う。 以前からフィギュアスケートはテレビ向きのスポーツだと思っていた。スケートリンクは結構広く、中段以上の座席からだと選手は遠い。目を凝らしても、表情などなかなかうかがえない。おまけに多くのアリーナはしんしんと冷える。 テレビではカメラがさまざまなアングルから選手を追う。画面いっぱいに選手の全身を捉え、さらに顔にズームアップする。感情移入もしやすい。 以前アリーナ観戦で人気が高かったのは、女子より男子フィギュアだった。「砂かぶり」ともいえる最前列は花束を抱えた追っかけの女性たち(比較的年齢は高い)で占められ、高額な座席でもあっという間に売れてしまう。おそらくピークはイリヤ・クーリック、エルビス・ストイコ、フィリップ・キャンデローロが活躍した長野オリンピック直後だったろう。フェンス広告を掲出するスポンサーには、女性をターゲットとする企業も多い。これはスポーツイベントとしては異例である。 昨今のリンクでは男性客が急増した。選手を凝視する態度が不気味だ、という評価も一部あるようだが、ファン層の拡大はスポーツにとっては良いことだ。今年の始めにNumberの表紙をミキティこと安藤美姫が飾って以来、女子スケーター達はタレント、芸能人なみの扱いである。ガイドブックや書籍も数多く書店の店頭に並び、情報量も増大した。トリノオリンピックの結果次第ではさらにブレイクするに違いない。 伊藤みどり以来、女子フィギュアスケート界での名古屋の存在感は凄い。他を圧倒する一大勢力である。身近なスーパースターの存在、世界最高のジャンプが、恩田美栄、中野友加里、安藤美姫、そして浅田真央をここまで育てたとも言えるだろう。今年は愛・地球博に予想を上回る入場者が訪れ、大成功。中部国際空港、セントレアは初年度から黒字を計上するなど名古屋の話題に事欠かなかった。スポーツにおいても名古屋は絶好調のようだ。 |