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vol.236-1(2005年 2月 2日発行)
岡崎 満義/ジャーナリスト

孫正義オーナーへのお願い



滝口 隆司/毎日新聞運動部 
   〜古豪慶応のセンバツ復活〜


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孫正義オーナーへのお願い
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 プロ野球のスプリング・キャンプが始まった。「球春」というなつかしい言葉が、すぐ思い出される。今年はソフトバンク、楽天という、時代の波に乗ったIT企業が球団経営に乗り出し、旧態依然の球界に、カンフル剤になるのではないか、とファンの期待が集まった。懸案のセ・パ両リーグの交流試合も予定され、プロ野球は盛り上がりそうだ。

 1つだけ、小さな不安がある。ソフトバンク・ホークスのオーナー孫正義さんが、昨年末、たしかNHKのテレビ・インタビューで話したことだ。

 「球場にカメラを30台位駆使して、あらゆる角度からのプレー映像を提供、見る人は自分の好きなものを選んでみることが出来るようにしたい。ファンに1億総評論家、1億総監督になったような楽しみを提供したい。ゲームの中でチャンスが来たら、ファンがいくつかの作戦の中から、こうしたい、と選べるようなシステムがあったら面白い」(最後の一節は、三木谷浩史楽天社長の談話だったかもしれない)

 こういう趣旨の発言があった。その真意は、サッカーのサポーターのように、グラウンドと一体になる楽しみを、球場に足を運んだファンにも、パソコンやケータイで見るファンにも与えたい、ということだろう。それがITを本業とするオーナーの、もっとも自然なサービスだ、というわけだろう。

 でも、ちょっと待ってもらいたい。プロ野球を見るのは、評論家や監督になるためではない。ただただ手に汗を握るような試合を見たいだけである。のべつまくなしの、耳をつんざく鳴り物入りの応援団も、ほんとうはない方がいい。投手の投げたボールが捕手のミットにおさまる音。打者が打ち返した乾いた打撃音が聞こえるようであるとうれしい。

 試合の流れに乗って、シーンと静まり返ったり、大声を張り上げたり。テレビで見るにしても、あまりに記録や数字にこだわった解説、あるいはあまりに芸能人的な応援・解説はごめんこうむって、ときどき、ビールを飲むのも忘れるほど、その試合に没入できるような、そんなテレビ中継であってほしい。

 ファンはファンの道を究めたいのである。ファンが評論家になったり、ましてや監督になったような気持ちになったりするのは、邪道である。究めたいのは「見る」ことである。どこまで広く、深く「見る」ことができるか。

 プロは見られることによって成長する。大化けする。ファンはただただ「見る」ことが仕事である。エセ評論家、エセ監督になってどんな価値があろうか。

 10数年前、女優の山田五十鈴さんにインタビューしたことがある。山田さんいわく「評論家の演劇評はとてもありがたいです。でもこわくはないです。こわいのはファン、私には熱心なファンがあって、公演の初日、中日、千秋楽と、必ず3回見に来て、ていねいなお手紙を下さるファンがあります。こういう人に見ていただいていることが、ほんとうにうれしいし、またこわくもあります」

 ファンの喜びはIT的な情報量の多さではなく、手に握る汗の量にかかっている。そのようなファンをどう増やしていくか、それがオーナーの一番大切な仕事だと思う。ITを駆使した情報と称するもので飾りたてて、野球をこまぎれのショーにだけはしてほしくないのである。


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