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2005ワールドリーグ男子バレーボール大会 日本×ベネズエラ 杉山マルコス


(C)photo kishimoto


2005ワールドリーグ
男子バレーボール大会
日本×ベネズエラ
杉山マルコス

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vol.256-1(2005年 6月22日発行)
岡崎 満義/ジャーナリスト

野茂英雄、日米通算200勝を喜ぶ

杉山 茂/スポーツプロデューサー
  〜世界陸上、男子10000m代表の再選考〜
滝口 隆司/毎日新聞運動部
  〜楽観できない野球の五輪存続〜
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野茂英雄、日米通算200勝を喜ぶ
岡崎 満義/ジャーナリスト)
 野茂英雄を見ていると、昔、三船敏郎が出ていたCM「男は黙ってビールを飲む」を思い出す。さしずめ「男は黙って野球をする」である。イチローも寡黙に近い印象があるが、彼の場合はバカな質問をはねつける強いカベのような、意志的な寡黙である。野茂の場合は、自分のことを喋る興味があまりなくて、その必要をあまり感じなくて、という自然体の寡黙であって、絶対に喋らないぞ、という意志的なものは感じられない。喋ってもボソボソと短く、何でも自己主張の時代とかけ離れた、古風な日本人を見る思いがする。
 
 野茂がドジャース入りした1995年は、日本にとって、大きな転換期となった年だ。阪神淡路大震災、オウム地下鉄サリン事件、ウィンドウズ95の発売の年であった。(私にとっては、「江夏の21球」を書いてくれた山際淳司さんの死もあった。)
 
 野茂がある意味で、石もて追われる如く、孤独に日本を離れ、ドジャースに入団したとき、私ははじめて「グローバル」という言葉を1人の人間の行動で実感できた。日本企業の海外進出、多国籍化は当たり前のことになっていたが、「個」の「グローバル」化がいよいよ始まった、と思ったのは、野茂の行動であった。大げさにいえば、野茂の渡米は、幕末、咸臨丸で太平洋を渡った勝海舟を連想させた。「褒貶(ほうへん)は他人の事、行蔵は吾に存す」(他人が批判、非難するのは勝手だ。行動するのは自分だ)という勝海舟の言葉も思い出された。
 
 大リーグ入りした投手第1号の野茂はトルネード投法、野手第1号のイチローは振り子打法と、それまでの常識からはずれた型をもった選手であったことが面白い。そして、野茂は渡米にあたって鈴木啓示監督と、イチローはオリックス時代、振り子打法で土井正三監督との間に確執があった。鈴木、土井とも日本プロ野球を代表する名選手であったことが、私には強く印象に残っている。偉大な成績、経験も、それを金科玉条として固定してしまうと、ときに若い可能性の前に立ちはだかる壁と化してしまうことがある、とわかった。
 
 野茂のドジャース入りが生き方の「グローバル化」を見せたのと同時に、「ウィンドウズ95」はインターネットの世界を一気にグローバル化した。人間のグローバル化、情報のグローバル化が、1995年に大きな飛躍のときを迎えたのである。昨年の日本プロ野球激震の立役者、楽天や、ライブドアの出現も、これ以降のことだ。
 
 野茂がドジャースで初勝利をあげたあと、私は野茂とテレビ電話インタビューをした。ロサンゼルスのホテルのひと部屋をスタジオとして野茂に来てもらい、私は江夏豊さんと2人で、大手町の国際電電の一室で、大画面に映る野茂とのインタビューとなった。江夏さんはその10年前の1985年、広岡西武を心ならずも辞め、ブルワーズのスプリングキャンプに参加した。最後の11人目の投手枠を、メキシコ出身のヒゲラ投手と争ったが、結局、若い、ヒゲラ投手が残ることになった。江夏さんは3Aで調整して、シーズンの途中からのメジャーの昇格を勧められたが、その道はとらなかった。もう少し若かったら、多分、江夏さんは3Aでしばらく我慢して、メジャー昇格を果したに違いない。
 
 私はインタビュアーとしてより、10年をへだててメジャーの野球について、真剣に語り合う2人の投手談議を、感慨深く聞いていた。
 
 私は最後に、野茂のマスコミ嫌いについて訊ねた。

 「取材に来るスポーツ記者が、ちっとも勉強していない。私の出た試合を1試合でも見ていれば分かることを、何もしないでインタビューに来る。来る人来る人、みんな同じ質問をする。そして最後は私が話していないことを書く。ウソを書かかれる」

 相変わらず、ボソボソとした話し方だったが、痛烈なマスコミ批判であった。

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