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2005 Freestyle FIS WORLD CUP 苗場大会 モーグル女子 里谷多英
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vol.238-1(2005年 2月16日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部

サッカー戦争と日朝戦


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サッカー戦争と日朝戦
滝口 隆司/毎日新聞運動部)

 4年前、中米の小国、エルサルバドルとホンジュラスを訪れた。サッカー・ワールドカップ(W杯)の歴史をたどる連載企画の取材だ。両国の間で1969年に起きた「サッカー戦争」の真相を掘り起こすという狙いだった。

 「サッカー戦争」とは、70年メキシコW杯の北中米・カリブ海予選で対戦したエルサルバドルとホンジュラスが、試合をきっかけに本当に戦争を始めてしまったという話だ。実際にはエルサルバドル人によるホンジュラスへの大量の不法移住に原因があった。しかし、その戦争はサッカーの熱狂とナショナリズムが結びついた象徴的な出来事として語られるようになった。

 当時の監督や選手の証言は生々しかった。ホンジュラスでの第1戦では、エルサルバドル代表のホテルを相手サポーターが取り囲み、楽器や爆竹を一晩中鳴らして選手は一睡もできなかったという。エルサルバドルでの第2戦では、ホンジュラス代表を国境まで軍用機が護衛し、試合後はユニホームのまま装甲車で空港へ直行。車で国境を越えてきたホンジュラスのサポーターには暴行や投石が繰り返された。当時のホンジュラス代表主将は「私は殺されるかも知れないと思った」と話してくれた。

 結果はホンジュラスでの第1戦、エルサルバドルでの第2戦はともにホームチームが勝って1勝1敗。中立地、メキシコでの第3戦ではエルサルバドルが3−2で勝利を手にし、W杯への出場権を獲得した。開戦日は両国で認識が異なるが、この第3戦の前後に戦争が始まったとされる。

 「あれはサッカー戦争ではない。政治が原因であって、サッカーには何の罪もない」という話をいたるところで聞かされた。もちろん、そうだろう。ただ、緊張関係が高まった両国の国民に、サッカーが火をつけたという点も否めない。

 政治を完全に切り離せるのか。かつての取材を思い出しながら、今回のW杯アジア最終予選、日本・朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦を観戦した。

 北朝鮮代表の来日直前には「右翼団体が注視している」という報道も見受けられた。メディアが国民を悪い方向に煽動しなければいいが、と心配になったが、それは杞憂だった。「政治は別」と書かれた看板を手にしたサポーターもいたように、観衆の意識は高く、トラブルは起きなかった。

 試合の数日前には「朝・日体育人新春懇親会」という催しが東京都内のホテルで開かれた。在日本朝鮮体育連合会と日本のスポーツ団体役員らによるこの会合は、毎年恒例なのだという。両国スポーツ関係者の交流は、今に始まったわけではない。

 02年日韓W杯で、韓国という隣国がより身近になったことを多くの人が実感している。政治よりも、スポーツが「世界」を近づけてくれる。そんな意識が浸透してきたことを日本のスポーツ界は誇っていい。


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