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vol.239-1(2005年 2月23日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部

揺らぐ巨大イベントの価値


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   〜増田明美さんの結婚〜
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揺らぐ巨大イベントの価値
滝口 隆司/毎日新聞運動部)

 来夏に日本で開催されるバスケットボールの世界選手権が、財政問題に苦しんでいる。チケット収入が思うように見込めず、運営にあたる日本協会が全国の選手、チームから1年分の登録料にあたる約4億円を「協力費」として集め、これを赤字リスク回避の資金にあてようとしたのだ。
 
 この話を最初に聞かされたのは、1月中旬の日本協会理事会の後だった。そんなやり方で実質的な「赤字補填」を行うのは、極めて異例だ。あくまでマーケティング収入でカバーすべき話ではないか、と日本協会の幹部に質問すると、「大会を運営する協会としても主体性を見せてカネ集めをしなければならない」と説明された。
 
 しかし、案の定だった。ミニバスケットをしている小学生からも協力費を集めるという強引な手法に対し、2月初めの臨時評議員会では各都道府県協会から一斉に反発の声が上がった。結局、その後に開かれた日本協会の理事会で案は撤回された。
 
 今夏の世界水泳選手権でも、財政問題がクローズアップされた。開催が決定していたモントリオールの財政難が発覚。国際水泳連盟(FINA)はこの地での開催中止をいったんは決議した。直後には組織委員会の幹部が自殺するという悲劇まで招いた。FINAはアテネやモスクワなどを代替候補地として検討したが、最終的にはカナダ政府や地元の支援が受けられるようになったモントリオールでの開催に再び落ち着いた。何ともお粗末な結果と言わざるを得ない。
 
 この2つの例が示すのは、「世界選手権」というビッグイベントでさえ、その商業価値に疑問符がつき始めたということかも知れない。モントリオールといえば、1976年夏季五輪で大赤字を抱え、長年に渡る市民の税負担が問題になった。五輪はその後、84年ロサンゼルス大会を機に商業主義路線で黒字転換し、「カネのなる木」へと姿を変えた。世界のスポーツ界も一斉にこの方向へ突き進んだのだ。
 
 だが、そうした結果、世界のトップアスリートは絶え間なく試合に追われるようになった。国内外の試合を転戦する過密日程には、選手への悪影響を指摘する声が多い。一方、試合が増加していく陰で、大会のビジネス的な価値も次第に低下していったのではないか、と思える。国際オリンピック委員会(IOC)のマーケティング関係者から「スポンサーが列を作って待っている時代は終わった」と聞かされたこともある。
 
 日本では07年に大阪で陸上の世界選手権が開かれ、水泳は09年世界選手権の招致に名乗りを挙げている。11年のラグビー・ワールドカップにも日本は立候補している。16年か20年には再び夏季五輪を日本でという話もある。巨大イベントを開催しただけで潤う時代ではない。こうした大会には税金が投入される。世界の流れをシビアに見極めなければならない。


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