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第11回世界水泳選手権大会モントリオール2005 フリールーティーン決勝 ロシア
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第11回世界水泳選手権大会
モントリオール2005
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ロシア

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vol.261-1(2005年 7月27日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部

波紋を呼んだインテルの英国遠征


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波紋を呼んだインテルの英国遠征
滝口 隆司/毎日新聞運動部)

 イタリアサッカーの名門インテル・ミラノが、英国遠征を突如中止すると発表したのは23日のことだった。4試合のプレシーズンマッチを予定していたが、ロンドンで起きたテロを理由に、直前になってキャンセルすると言い出したのである。これに対し、対戦相手のレスター、ノーリッジ、クリスタルパレス、ポーツマスの各クラブが一斉に抗議。英国側の猛反発を受けてインテルが翌日には方針を撤回するという騒動があった。

 人気チームの試合だけに、中止による経済的損失も大きく、損害賠償を求める話もあったという。ただし、「カネの話」だけが撤回の理由ではないだろう。

 BBC放送によれば、インテルが中止を決定した時、ノーリッジの幹部は「遠征を中止するなら、それはテロに屈することだ」と言い、ロンドンのリビングストン市長は「中止は非常におろかな行為だ。テロリストの思うがままだ。彼らはわれわれの生活を変えようとしている。そして彼らはきっとインテルの決定を喜ぶに違いない」と強く非難した。テロに対してスポーツはどうあるべきか、と問う声は英国内で高まり、これを受けてインテルが最終的に遠征実施に踏み切った。

 ニューヨークで起きた2001年の「9・11同時多発テロ」。あの時も、多くの日本の競技団体が海外遠征を見送った。日本体操協会は体操と新体操の世界選手権への派遣を中止し、日本ウェイトリフティング協会も世界選手権を辞退する決定を下した。日本水泳連盟や全日本柔道連盟も国際大会に選手を送らず、「日本は過剰反応しすぎではないか」と言われたものだ。

 9・11直後に開かれた日本オリンピック委員会(JOC)の理事会が思い出される。さまざまな意見が飛び交う中、その大半は「国際大会には積極的に参加すべきだ」という声だった。

 国際オリンピック委員会(IOC)委員で、当時日本サッカー協会の会長でもあった岡野俊一郎氏は「国際試合は全て参加する方針でいる。ただし、協会の責任者が現地に行き、何かあった場合は最終決定を行うべきだ」と主張し、同じくIOC委員の猪谷千春氏(このほどIOC副会長に就任)も「国際スポーツ界はテロには屈しないという姿勢が基本だ。JOCもそうしたジェスチャーを示すことが必要ではないか」と述べた。

 一方、欧州遠征を中止した全日本柔道連盟の松下三郎専務理事も「今回は欧州から冷たい目でみられた。次は日本での国際大会に来てもらえなくなる」とスポーツを通じた国際交流に亀裂が生じることを怖れていた。

 選手の安全に配慮する慎重な考えは理解できる。インテルもそうだったのだろう。しかし、危険と隣り合わせであっても、スポーツには平和な社会の象徴としての役割がある。不安定な国際情勢。しっかりとした指針がなければ、スポーツ界の足元は揺らぐ。


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