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vol.332-3(2006年12月22日発行)
葉山 洋 /マーケティング・コンサルタント

「メディア変革期のスポーツ中継」
  〜今年を振り返るA〜

 インターネットを軸にメディア環境が変わりつつあるようだ。この変革の時がどれ程続くのか誰も予測できないが、いずれにしても40年以上にわたったテレビ主導による安泰の時代(パックス・ロマーナになぞらえてパックス・テレビジオンとでも名づけたらどうか)は終焉を迎えつつある。モバイル、ブログ、SNS、口コミなど、コミュニケーションは一筋縄では達成しにくくなった。

 報道であれ、広告であれ、ことコミュニケーションに関しては「マス」に伝達することが是とされ、テレビは目的達成のための最強・最適のメディアとして君臨してきた。テレビを活用していれば、広告主だけでなく消費者も安心、満足。お茶の間の団欒もテレビ中心、一人暮らしの寂しさを紛らわしてくれるのも、やはりテレビだったのだ。

 今年、経済の回復基調にもかかわらずCM枠は思ったように売れず、テレビ局各社の業績は伸び悩んでいる。まだ深刻と言うほどではないが、テレビ離れは徐々に現実のものになりつつある。個々人の参加を重要視するウェブ2.0の概念で評価すれば、地上波テレビのような一方通行のマス・コミュニケーションは時代遅れの烙印を押されかねない。

 そんな逆風の中で直近の11月に健闘したのはTBSだった。他の在京民放をしのぐ平均視聴率を稼ぎ出したのだが、貢献したのはひとえにバレーボール世界選手権である。赤坂のスポーツ関係者の皆さんはさぞかし鼻息が荒いだろう。

 近年のスポーツ中継は過度な演出が目立つ。CGを使った大袈裟なタイトルや「駆り立てるような」テーマソングにとどまらず、ジャニーズ系やモー娘のようなタレントを前面に立て、会場でも大騒ぎをする。アナウンサーや解説者も不気味なほどハイテンションで、視聴者は何だか居心地が悪い。今年の世界バレーはその典型であった。

 恐らく、コンテンツとしてのスポーツ本来のパワーや魅力に自信が持てないから、どうしても演出で不安な要素を補おうと頑張ってしまう。高額な放映権を買ったのに視聴率が取れなかったら、という強迫観念にとらわれているのかもしれない。

 過剰な演出は、今までもたびたび批判を浴びてきた。スポーツをゆがめる、と警鐘が鳴らされてきた。しかし現実には、世界バレーはビジネス的には成功したわけで、「演出派」は自信を深めたろう。「あおり」に乗って視聴者は興奮し、日本が上位に食い込まなくても、立派な数字が出たのだから。

 4年後の世界バレー(女子)も日本開催に決まった。メディアコンテンツとしてのスポーツの評価は上がる一方だが、強引なドラマチック仕立てはこれからも収まりそうにない。視聴者をなりふり構わずつなぎ止めようとする死に物狂いの努力は、激動の変革期における旧システムのあがきにも見えてしまう。

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