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vol.331-2(2006年12月13日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「黒人監督の難しさ」

 フロリダ州オーランドで開催された、大リーグのウィンターミーティングを取材した。その中で全球団の監督が、2日間に渡り、記者会見に応じて、来季の構想を語る、大変面白い行事があった。

 不参加だったのは、ヤンキースのジョー・トーリ監督と、パイレーツのジム・トレーシー監督の2人だけ。

 1人30分間の時間限定だが、公式戦の試合会見では聞かれない、本音も分かる、ざっくばらんな話し合いは、今後のために有りがたかった。

 私が取材した中で、注目したのは、黒人でただ1人レンジャースの新監督に起用された、ロン・ワシントン。アスレチックスの3塁コーチを10年間も務めたのち、初めてメジャー監督の夢が叶った。

 「マイノリティー(少数者)に光りを」と提唱する、コミッショナーの意向を受けて、黒人登用の道は開けたが、このオフ、アルー(ジャイアンツ)、ロビンソン(ナショナルズ)、ベイカー(カブス)と、3人の黒人監督が解雇され、今や、黒人監督で残るのはランドルフ(メッツ)1人しかいない。

 純粋なアフリカン・アメリカンのワシントンが、必ずしも黒人監督に寛容とは思えない、テキサスで成功するのは、よほどの信頼をナインから得ないと、苦難の道ではあるまいか。

 会見で、ワシントンが強調していたのは「私は、選手側の監督である」のコメントを繰り返していたことだ。前監督バック・シュワルターは、選手と一線を画し、冷たいムードだっただけに、ヒックス・オーナーが「チームのムード一新には彼がベスト」と決断した期待に応えるのは、「選手の気持ちをつかむのが第一」と考えたからに違いない。

 陽気で明るい男か、と想像していたら、実に、きまじめな問答に終始し、「基本を忠実に」を言い続けていた。

 自分が孤立しないように、と、父とも恩師とも言える、アスレチックス時代のアート・ハウ監督を「ぜひ、自分を助けて欲しい」と、懇請してベンチ・コーチに要請した慎重さだが、「黒人監督は成功しない」歴史を破ることができるかどうか。

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