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第12回Vリーグ女子 NEC・レッドロケッツ×デンソー 大貫美奈子


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vol.286-1(2006年 1月25日発行)
岡 邦行/ルポライター

日大野球部監督“ヒロシ”について

岡崎 満義/ジャーナリスト
   〜ホリエモンがこけた〜

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日大野球部監督“ヒロシ”について
岡 邦行/ルポライター)

 もうすぐ2月。正月から1ヵ月が過ぎようとしているが、私の毎年の仕事始めは、日本大学野球部を取材することだ。正月早々に千葉県習志野市実籾にある日大グラウンドに足を運び、ベンチやネット裏から練習を眺める。そして、選手たちから親しみを込めて“ヒロシ”と呼ばれる監督の鈴木博識(ひろし)と語り合う。

この10年間の私は、鈴木が率いる日大野球部を追いかけている。私が鈴木と知り合ったのは23年前。1983年の夏だ。もちろん、取材をしたことがきっかけであり、当時の鈴木は青森県の青森商業高の監督だった。その後の鈴木は、高校野球監督浪人生活を経て、神奈川県の日大藤沢高の監督となり、9年間に甲子園大会に2度出場。その手腕が認められて10年前に日大監督に就任した。その間、途切れることなく鈴木と私の付き合いはつづいている。私が“鈴木野球”に執着しているのは、その鈴木の野球に対する熱い姿勢に惚れているからだ。

 この1月11日から巨人の小久保と二岡、木佐貫、ソフトバンクの斉藤、横浜の吉見たちプロ野球選手は、2月1日からのキャンプインに向かって奄美大島の名瀬市で自主トレをやっている。小久保はダイエー(現ソフトバンク)時代の99年から毎年のように名瀬市で自主トレを行っているが、実はプロ野球選手に限らず、大学野球や社会人野球チームが鹿児島市から南南西約380キロも離れた東シナ海にある奄美大島の名瀬市をキャンプ地に選ぶようになったのは、鈴木の大いなる働きがあったからだ。

 96年に日大監督に就任した鈴木は、1年後の97年から名瀬市を春のキャンプ地に選んだ。しかし、鈴木は落胆したという。当時の野球場は、ライトとレフトの両翼がホームベースから90メートルと狭く、グラウンド状態もよくない。その上に室内練習場もなかったからだ。

 そんな鈴木を引き止めたのが、当時の名瀬市の教育委員会次長と市会議員だった。2人は鈴木を前に真剣な表情で口説いた。
―名瀬市は「スポーツアイランド構想」を打ち出しています。スポーツでもって地域振興と活性化を図りたい。スポーツを通して青少年の教育と健康づくりをしたい。近々「名瀬市プロ野球キャンプ誘致促進協議会」を発足させる予定です。協力して下さい・・・。

 そういわれると鈴木は、黙っていられない。
全面的に協力することを約束した。

 1年後の98年6月。名瀬市は総額8億円を投じて野球場を改修し、さらに室内練習場を建設。その2ヵ月後には名瀬市プロ野球キャンプ誘致促進協議会を発足した。当初はライトとレフトの両翼を95メートルにする予定だったが、鈴木の強い助言で両翼100メートルの野球場に改修した。

「将来、プロ野球のキャンプ地にする考えがあるのなら両翼100メートルにすべきです。なぜなら大学野球も社会人野球も同じなんですが、とくにプロ野球の場合は、広い球場でないと実戦練習はできません。つまり、狭い球場と広い球場とでは守備の際のフォーメーションプレーが、まるっきり違います。外野スタンドなんかなくともいいです。両翼100メートルにしてください。それにフェンスはコンクリートではなく、選手の怪我を防ぐためにクッションのきくものにすべき・・・」

 そう鈴木は、助言したのだった。
 1年後の99年2月。初めて私は、名瀬市でキャンプを張る日大野球部を訪ねた。鈴木と選手たちは、地元の野球少年約400人を招待して恒例の野球教室を開いていた。

「岡さん、これで内野守備練習のできる専用グラウンドができればいうことなし。プロもキャンプ地として視野に入れてくれると思いますね・・・」
 初めて私が、名瀬市を訪ねてから7年の歳月を経た。その間、多くのプロ野球選手が自主トレの地に名瀬市を選び、社会人や大学野球チームがキャンプを行っている。

 しかし・・・。この1月半ばに鈴木に会うと渋い顔をして私にいった。
「・・・たしかに巨人の小久保たちプロ選手が自主トレをやるために奄美に行っている。・・・しかし、岡さんも知っている教育委員会次長だったTさん、市会議員だったNさんたち・・・。野球を理解してくれているスタッフたちが現場を離れたためかもしれない。グラウンドのメンテナンスをきちんとやってないと聞いている。・・・何事も継続することが大事ですよね。この2月半ばからウチのチームは奄美でキャンプをやるんですが、そのときに責任者に強くいわなければ・・・。岡さん、別に文句をいうわけじゃないんですが、私がいうのはけっして生意気じゃないですよね?」

 私は、そういう鈴木を前に黙って頷いた。


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