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vol.307-2(2006年 6月27日発行)
岡 邦行 /ルポライター

6月9日、ロッテのボビー・バレンタイン監督が、
 報道陣の前で次のようなことを口にした

  6月9日、ロッテのボビー・バレンタイン監督が、報道陣の前で次のようなことを口にしたという。
「近年のスキャンダルで裏金はなくなったと思われたが、けっしてなくなっていない。昨年のドラフトで裏金を使っている球団がある。少なくとも4ヵ所から聞いた。総額は30億円・・・」

 つまり、バレンタイン監督は、“裏金”でもって有望選手を獲得するプロ球団の実態を暴露したわけだ。

現在、ドラフト指名選手に対して球団が支払う契約金の上限は1億円、それにプラス出来高払いの上限が5000万円。早い話が、どんなにすごい選手でも入団の際は1億5000万円しかいただけない。このことについては、プロ側とアマ側が覚書でもって申し合わせている。

 ところが、当然のごとく覚書を無視。有望選手獲得のためにプロ側は裏金を出している。その現状をバレンタイン監督は耳にし、報道陣の前で口にしたわけだ。

 結果、どうなったのか? バレンタイン監督の暴露発言が新聞報道されたためだろう。コミッショナー事務局長が、ロッテ球団に対してバレンタイン監督の発言の真意を問う文書を送った。そして、10日後の19日に返答を受け取ったということで発表した。
「スカウト活動で違反しないという倫理行動宣言に基づき、何か問題があれば調べて対処することになっている。同監督の発言について問うたところ、誤解があり趣旨とは違うと返答がきた。我々は不正の事実が提示されれば、厳正に対処する・・・」
と、コミッショナー事務局長は言い、一件落着とした。
 しかし、疑問だらけであり、曖昧だった。「誤解があり趣旨とは違う」というロッテ球団の返答の内容は報道されていなかった。

バレンタイン監督の発言はともかく、今やプロ側が有望選手を獲得するために裏金は使っていない、というセリフを単純に信じる野球関係者はいないはずだ。1億5000万円を上回る大金で有望選手を獲得しているのが現状なのだ。すべての球団とはいわないが、裏金を提示しての選手獲得は事実であり、慣習になっているといってよい。

 もちろん、球団側が出す裏金は、選手本人が手にすることもあるが、親族に渡ることもある。そのために税務署に指摘され、修正申告をした親族もいる。また、逆に裏金の一部を球団職員がバックマージンとして要求。それが球団幹部にバレ、閑職に追いやられた者もいる。

たとえ1億円を下回る契約金を提示された選手でも、マスコミで公表される以外の裏金が用意されていることも多い。その裏金目当てに選手をプロに送り出す指導者やブローカーまがいの行為に出る輩もいる。「俺、もうすぐ退職なんだよなあ。退職金も当てにならないし・・・」などといって暗に裏金をせびるとんでもない奴もいる。

これが日本野球界、ドラフトのウラの現実なのだ。

 こんな例もある。私が何度か取材したことがある、ある地方のアマ指導者は選手が手にするはずの契約金の一部を懐に入れたと見なされ、野球界を半ば追放された。一方、さらにその選手の契約金の一部を、アマ指導者に「プロ入りさせてやるから契約金の一部を」とばかりに要求したと噂された球団職員は何の処分もされなかったようだ。このことについていえば、日本の球団職員の給料が低いためだろう。ついついバックマージンを要求してしまう・・・。なんとも悲しい話だ。

 ドラフトの世界には常に裏金が見え隠れしている。この際、コミッショナーは徹底的に裏金の実態を調査すべきではないのか。「不正はなかった」のではなく「不正は間違いなくある」のだから。
私は思う。そのうち球界を揺るがすスキャンダルが起こるのではないかと、そう危惧している。2年前、3人のオーナーを辞任させた“一場事件”は氷山の一角なのだ。

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