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第20回オリンピック冬季競技大会(2006トリノ・オリンピック) スピードスケート・男子500M 加藤条治


(C)photo kishimoto


第20回オリンピック
冬季競技大会
(2006トリノ・オリンピック)
スピードスケート・男子500M
加藤条治

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vol.289-1(2006年 2月15日発行)
岡崎 満義/ジャーナリスト

原田老いたり!

杉山 茂/スポーツプロデューサー
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原田老いたり!
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 よくも悪くも、スキー・ジャンプの原田雅彦選手(37)は“オリンピック男”である。ジャンプ選手として浮き沈みが激しく、つまり、それなりに人をワクワクドキドキさせる。喜怒哀楽がクッキリしていて、原田ファンは多い。ジャンプ界のトリックスターとして、私はいつもプロ野球の新庄剛志選手を連想する。面白い存在だと思っていた。

 '94年リレハンメル五輪では、団体戦の最終ジャンプで失敗、目の前にぶらさがっていた金メダルをふいにした。一転、長野五輪では個人ラージヒルで銅メダル、団体でも金メダルと大活躍。ヤンヤの喝采を浴びた。今度のトリノ五輪では直前まで不振にあえいでいたが、最後の最後でみごとに代表の座をかちとり、奇跡的な大ジャンプが期待されていた。事実、本番前の練習でも好調だったと報じられたから、私はなおさら期待を膨らませていた。
 
 ところが、なんと「失格」。ノーマルヒル予選で使ったスキー板が、長すぎたというのだ。「BMI(ボディ・マス・インデックス)ルール」に違反したのだ。長野五輪の後、スキー板の長さは身長の146%と決められた。ところが近年、過度の減量で飛距離を延ばそうとする傾向が見られ、体重が軽すぎると板を短くするという規制がつけ加えられた。
 
 原田は身長174センチ、今回253センチのスキー板を使ったのだが、2回目の前に検査したところ、体重が60.8キロだった。これは「59キロ〜61キロ未満」の選手扱いになり、スキー板は251センチのものしか使えないのだという。わずか体重200グラムが不足して、失格したことになる。

 原田は253センチのスキー板を使うには、60キロあればいい、と思っていたという。「初歩的なミス」と本人も認めた。わずか200グラムの誤算!

 トリノ五輪の序盤、日本勢は低迷、もがき苦しんでいる。風邪や怪我、腰痛などで100パーセントの力が出せない選手が多い。また、いわゆるプレッシャーに負けて、「それでも楽しめました」という選手もいる。それはそれでいい、というより、それで仕方がない。とにかく、試合には出たのだから。それにしても、金銀銅メダル以外はその他大勢、という意識が選手にもフアンにも益々強くなってきたのは困ったことだが。

 ところが、原田選手の場合は体重管理のミスから、あたらチャンスを逃してしまったのだ。たしかに、国際スキー連盟が「身長・体重・板の長さ」の関係を、しばしば変更するのもどうかと思う。公平性をいかに確保するか、を追求するあまり、本来スポーツが持つ大らかさが消えてしまうような感じがする。公平性をあまり厳格に求めすぎると、狭い専門、プロの世界だけのこととなり、一般の素人ファンには縁のない、よく分からないことになってしまう。もう少し、大らかであっていいのではないか。日本のスキージャンプ関係者には、板の長さ問題では、日本人の視点からもっと自己主張してもらいたい。

 それはそうとしても、原田選手の200グラム体重不足は一体、どうしたことか。信じられないミスだろう。一流アスリートにもっとも求められるのが自己管理だ。何度もスポーツの修羅場をくぐり抜けてきた原田選手に、こんなボーンヘッドがあるとは、にわかには信じられないのである。17歳や18歳の選手ではないのだ。うっかりミスというには、あまりにも大きな代償を支払ったことになる。メダルがとれた、とれない、という問題とは次元が違う。まさに“オリンビックリ男”となった。がっかりした。


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