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第82回日本選手権水泳競技大会 男子200m 背泳ぎ 決勝 森田智己


(C)photo kishimoto


第82回日本選手権
水泳競技大会
男子200m 背泳ぎ 決勝
森田智己

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vol.299-1(2006年 4月26日発行)
岡崎 満義/ジャーナリスト

新庄剛志選手の新しさ

杉山 茂/スポーツプロデューサー
  〜不要に近い「トライ数」への興味〜
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新庄剛志選手の新しさ
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 日ハムの新庄剛志選手が突然、今シーズン限りでの現役引退を発表した(4月18日)。右手の故障などもあって、肉体的な限界をずっと感じていたようだ。引退を決意したのは3月25日、本拠地札幌ドームの開幕戦(対楽天戦)の直後だったという。

 開幕戦で4万3千人の観客がつめかけて満員となり、「オレの夢がかなった。自分の仕事は終った」と感じたのだという。いかにも新庄選手らしい“感受性”だ。「満員」が引退の引き金になるところも、新庄選手の新しさ、である。

 新庄選手はプロ野球のトリックスターだ、と思っていた。「トリックスター」を辞書で引いてみると「神話・民話などに登場する、機知に富むいたずら者。善悪や賢愚を兼ね備えた超自然的存在」とある。こういう存在が出現すると、がぜん楽しくなる。

 仮面をつけてグラウンドにあらわれたり、3年間の大リーグから日本球界に復帰したとき「これからはメジャーリーグでもなく、セ・リーグでもなく、パ・リーグの時代です」と大見栄を切ったり、何かと派手なパフォーマンスが目立った。

 口から出まかせを言っているようで、今年のWBCの日本チームを見れば、まさにパ・リーグのオールスター、新庄発言を裏付けるものだった。

 11年間在籍した阪神タイガースから、5年間12億円という破格の複数年契約をもちかけられながら、ふりむきもせず、さっさと念願のNYメッツへ行ってしまったカッコよさ。

 メジャーへのチャレンジャーの中に、超マジメな野茂、天才イチロー、堅実な松井にまじって、道化・トリックスターの新庄が加わることで、なんとなくホッとするものがあった。日本球界を代表して、マナジリを決して挑む必死さとはひと味ちがったもの―とにかくやりたいと思うことをやってみよう。失敗したら、したときの話だ。というふうな、究極のゆとりある遊び心のようなものを感じた。こういう選手がいると、ほんとうにファンとしても助かる、という感じなのだ。

 芸術の世界で新庄的なトリックスターは誰だろうか、と連想をめぐらせて、画家・岡本太郎に行きついた。1970年の大阪万博会場に"太陽の塔"を作った人だ。テレビCMに出て「芸術は爆発だ」とか「グラスの底に顔があったっていいじゃないか」と目ン玉をグリグリさせながら、吼えた芸術家である。とり澄ました芸術を、生活臭い、身近なものにしてしまう魔力をもった人だった。

 岡本太郎さんに一度、取材したことがある。庭には「座ることを拒否する椅子」があった。表面に鬼の角のような大きなトゲがいくつもあった。岡本さんは「イテテテ・・・」とアゴを手で押さえ、顔をゆがめていた。聞いてみると、前日までスキー場に行っていて、滑るときにあまりに強く歯を噛みしめていたので、アゴの骨が痛くなったらしい、とのことだった。スキーによる足腰の痛さでなく、アゴの痛さ、というふしぎな関係があらわれるところに、トリックスターたるゆえんがある、と思ったりした。

 私は新庄選手に、いつも岡本太郎的なものを感じて、好感をもって見ていた。

 最近、新庄選手と同年1972年生まれの、新しいIT産業界のトリックスターが生まれた、と楽しみにしていたのが、ライブドアのホリエモンだった。スポーツ界を追いかけて、他業界でも新しい人種が、まずはトリックスターの姿であらわれはじめた、と楽しみにしていたので、あまりに早くこけてしまったのは、残念至極だった。

 新しい時代を切り拓くには、新庄剛志、岡本太郎、ホリエモン(堀江貴文)のようなトリックスターは必要なのだ。


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