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vol.306-2(2006年 6月21日発行)
杉山 茂 /スポーツプロデューサー
観客数微増のセ・パ交流戦

 よく言えば、人気が落ちついたのかもしれない。逆の見方をすれば、昨年に感じた“新鮮度”は乏しかった。プロ野球の「セ・パ交流戦」である(6月20日終幕)。

 全216試合に足を運んだ観客は約509万人、1試合平均は昨年に比べ108人増の23,557人で、まったく“同じ”と考えていい。

 通常の両リーグ公式戦に比べると、今年もパ・リーグ側には、さまざまな面で「プラス」とされ、セ・リーグ側は、やや渋い表情だとされる。

 パ・リーグ各球団は、日ごろ、メディア、とりわけテレビ露出が少ないだけに、セ・リーグの力を借りたこのシリーズは大きい。

 プロ・スポーツは、抜群の力量と人気を備えたビッグスターの存在も欠かせないが、リーグの傘下に参集しているチーム(クラブ)やプレーヤーの拮抗した緊張感が薄くては、フアンのハートをつかめない。

 花形の存在に頼るという日本の興行形態をプロ野球界は、なかなか拭えなかったのである。

 アメリカのプロバスケットボール(NBA)やプロアイスホッケー(NHL)のプレー・オフを見ていると、リーグ自体が力の均衡に意をつくし、各ホームタウンの熱狂度を高めて、全体の活況につなげているのがよく分かる。「1人勝ち」は、プロ・スポーツでもっとも好ましくない流れだと、各オーナーがわきまえている。

 セ・パ交流戦が、100人台の微増であったにしても、マイナスの数字をはじかなかったのは、よかった。

 僅かでも下降線を描けば早々と再検討論が、まるで正論のように説かれただろうし、その風が強くなるのが、この世界の体質だ。

 パ・リーグも、2シーズンの成果に甘えてはなるまい。公式戦の活況へどうつなげるか、その課題を乗り越えなければ、交流戦は持続できなくなる。

 12球団が入り乱れる面白さには、シーズンオフのトレードの活発化が不可欠、とは、すでに半世紀以上も、ジャーナリストたちによって指摘されつづけている。

 1球団のユニホームにこだわり、トレードを新天地への展開と受けとらず“都落ち”のようにネガティブに捉えるのは、日本社会の一面を語りもするが、いまや、時代が変わっている。

 アメリカ・プロスポーツやヨーロピアン・サッカーの“移籍市場”は、選手を想い、チーム(クラブ)を想い、リーグを想い、フアンを想うものではないか。

 トレードによるビッグスターの“交流”は、プロ野球の新たな魅力になり得る。

 増えた108人。大切にしたい数字であろう―。
 注)数字は6月21日付日刊スポーツを参考

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