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第12回Vリーグ女子 優勝決定戦 パイオニア・レッドウイングス アリー・セリンジャー
(C)photo kishimoto


第12回Vリーグ女子
優勝決定戦
パイオニア・レッドウイングス
アリー・セリンジャー監督

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vol.292-2(2006年 3月10日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部記者

全日本とパワーバレー



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全日本とパワーバレー
滝口 隆司/毎日新聞運動部記者)

 3日から5日にかけて東京体育館で行われたバレーボールの女子Vリーグ優勝決定戦は、パイオニアが久光製薬に勝って2年ぶり2回目の日本一の座に就いた。面白かったのは、その後の記者会見。歯に衣着せぬ物言いで知られるパイオニア・セリンジャー監督の“大演説”だった。

 セリンジャー監督は、まずこんな風に優勝の感想を語った。「本当に強いチームになった。このチームで全日本にチャレンジしたいぐらいだ」。パイオニアには吉原知子、佐々木みき、栗原恵といったアテネ五輪のメンバーがいるが、現在はだれも全日本には選ばれていない。優勝を争った久光製薬にも全日本の選手は一人もおらず、そのことに対する不満があった様子だ。

 セリンジャー監督の全日本批判はこれが初めてでもなく、バレーの担当記者たちも「また、始まったか・・・」といった顔で聞いている。だが、優勝コメント以上に力がこもった言葉にはなかなかの重みも感じられた。

 「かつてバレー協会のトップに『ジャンプをして3b25に手が届く日本選手はいるのか』と聞いたことがある。彼らは『それは無理だ』と答えた。しかし、私は可能だと思っている。今、ウチのチームでは佐々木が3b18まで届く。日本はテクニックの方ばかりに目がいっている。しかし、パワーとテクニックのバランスが必要だ。それを成し遂げたのが中国だ」

 日本人の身体能力は他の民族よりも劣るのか。日本の選手は体力強化よりも技術力アップを求めるべきなのか。それとも外国人に負けない体力を身につけることは可能なのか。セリンジャー監督は言った。

 「相撲レスラーもあれだけ強くなれるんだ。私もパワーバレーを求めている」
セリジャー監督は金メダルを獲得した1976年モントリオール五輪を例に挙げ、「あの時の白井貴子。ああいう大砲が日本には必要なんだ」と力説した。さらには「近年では94年の全日本が良かった。日立とダイエーの連合軍で山内(美加)や福田(記代子)らがいた。あの時は高さもパワーもあった」と振り返った。このチームには大林素子や吉原知子も名を連ね、ワールドグランプリではロシア、米国、ブラジルに勝って予選2位で通過し、決勝ラウンドでは4位。世界選手権では7−8位決定戦で中国を破った。

 さて、パイオニアは全日本に勝てるのか。そんな質問にセリンジャー監督は「全日本メンバーにだれが選ばれるかという問題はあるが、今のウチの戦力ならまず負けるわけはない。勝てない方が驚きだ」と言い切った。その自信はパワーと高さを求めてきた“哲学”から来るものなのかも知れない。

 日本スポーツの強化はどう進むべきか。技術なのか、パワーなのか。バレーだけでなくどの競技でも明確な方向性が見えない。セリンジャー監督の言葉は、その答えを引き出すきっかけになりはしないか。


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