スポーツネットワーク
topページへ
スポーツバンクへ
オリジナルコラムへ
vol.320-3(2006年 9月29日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞大阪本社運動部記者
ネットで見た新庄引退セレモニー

 27日の夜、帰宅して何気なくインターネットにアクセスした。午後9時前のことだ。ヤフーの画面には「日本ハム×ソフトバンク戦 ライブ中継」という文字が出ている。日本ハムの最終戦、レギュラーシーズン1位かどうかが決まる試合なのだ。我が家のテレビでは地上波とBSしか見られず、そもそも放映されることさえ期待はしていなかった。パ・リーグの試合がシーズン終盤とはいえ、ゴールデンタイムに流れることなどまずあり得ないと思っていたからだ。しかし、ネットで生中継されると知ってすぐさまパソコンの前に釘付けになった。

 動画配信の画面では専用のソフトをすぐにダウンロードできるようになっていた。インストール終了後映像に接続するのだが、これがなかなかうまくいかない。一度は「回線が混み合っています」というメッセージが出てエラー。やっぱりネットでの動画生中継は難しいのか。

 我が家のパソコンはADSL回線を使用しているが、接続後も最初は音声がブツ切れで、映像もしばしばストップした。しかし、しばらくすると安定して映像が流れ始めた。日本ハムの1位が決まり、画面からはヒルマン監督のスピーチが徐々にクリアに聞こえてくる。選手たちがベンチに下がり、これで終わりかと思っていたら、場内の照明が消えた。新庄の引退セレモニーだった。

 パソコンの全画面表示にしても映像はさほど粗くはなく、しだいにテレビを見ているような感覚になった。セレモニーが終わっても配信は終わらず、記者会見、祝勝会へと続く。時間的制約がない。これがネット中継とテレビ中継の大きな違いだ。

 生中継をこれほどクリアに見られる配信技術があるのなら、視聴者にとっては有り難い限りだろう。そこで他にはどんなものが見られるのか、と思って調べてみた。ところが、「ヤフー動画」で見られる生中継は非常に限られている。スポーツでは日本ハムとソフトバンクのホームゲームと、自動車の「SuperGT」、地方競馬ぐらいのものだ。その他はダイジェスト版やゴルフレッスン、サーフィンなど。やはり、技術が進んでもソフトをそろえるのは容易ではないのかも知れない。

 通信の世界は、映像の技術では放送にかなり近づいていると思われる。問題は配信する中身、コンテンツだろう。そこには複雑な権利関係が絡み合う。日本ハム戦の映像はCS放送「GAORA」で流れているものがネットにも同時に配信されていたようだ。ところが、よく分からないことだが新庄の引退セレモニーの時だけは会場の音声が聞こえず、日本ハムの応援歌が延々と流され続けた。これは何かの権利を保護するためなのか。

 「放送と通信の融合」。これがスポーツ中継にどう溶け込んでいくかは試行錯誤の段階といえる。30日からは兵庫国体で全39競技がネット中継されるなど、通信の世界はさまざまな「仕掛け」を起こしている。だが、技術革新だけでは変わらない。その背後に動くビジネス、いわばコンテンツをつかむカネの流れが今後のスポーツ中継のカギを握ることは間違いない。

筆者プロフィール
滝口氏バックナンバー
SAバックナンバーリスト
          
無料購読お申し込み

advantage
adavan登録はこちら
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望

Copyright (C) 2004 Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。  →ご利用条件