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vol.323-2(2006年10月20日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞大阪本社運動部記者
練習をしなくなった巨人

 テレビのニュース番組で、プロ野球、中日の落合監督が興味深い話をしていた。日本シリーズのことではない。開幕直後のスタートダッシュから一転、6月以降はずるずると順位を下げ、結果的に4位でシーズンを終えた巨人のことである。

 落合監督は巨人の結果を予想していたという。「巨人はほかのチームに比べて練習量が少ない。だから、シーズン中に故障者が相次ぐと思っていた」。落合監督はそんな内容の話をした。

 上原、阿部のバッテリーや小久保、高橋由といった主軸が故障で戦列を離れた。4月には独走しそうな勢いで首位に立っていたが、6〜7月には8連敗、10連敗、9連敗と負け続け、8月には最下位にまで転落してしまった。

 それにしても、巨人が練習不足という見方は意外な気がした。私が2002年に巨人を担当していた頃、巨人の練習量が話題になるようなことはなかった。当時、ナイターが終わった後も主力選手は帰宅の途につこうとはせず、すぐにベンチ裏の室内練習場で打ち込みを始めた。松井(現ヤンキース)らがそうして室内練習場に入ってしまうのは新聞記者泣かせで、締め切り間際になっても彼らのコメントがなかなか取れずに苦労したものだった。

 だが、落合監督が言っているのは試合前や後の練習とは、もっと違う次元の話なのかも知れない。「練習量が少ないから故障者が相次ぐ」という指摘は、シーズン中だけでなく、春季キャンプや前年の秋季キャンプを含めた部分をも指している。その辺から徹底して鍛えておかなければ、シーズンを通して働ける肉体は身につかない。

 なぜ巨人の練習量は減ったのか。フリーエージェント(FA)が導入された1993年以降、巨人はこの制度に依存するかのような補強を次々と進めてきた。選手を育てるよりも、他球団の主力を連れてくることによってチーム力を10年余りも維持してきた、といっていい。その風潮がチーム内の競争意識をそぎ、「練習しなくなった巨人」を作ってしまったのだろう。現役時代の落合監督もFAで中日から巨人へ移った選手である。当時から落合監督は巨人の弱点を見抜いていたのではないか。

 東京ドームでの中日戦、目の前で落合監督の胴上げを見せつけられた原監督は自身の公式ホームページにこう書いている。

 「この差を埋めるためにはどうすればいいのか。まずできることは、チーム内の競争環境を整えることです。今年のままでは、また繰り返しになることは目に見えています。競争意識を高め、限界を越えるように頑張れる環境を作ることです」(一部略)

 確かに、今季は脇谷や矢野といった新顔がレギュラーの一角に食い込んだ。しかし、主力と競い合う状況が生まれたわけではない。存在感がどんどん薄れる巨人。原監督が掲げる「競争」の意識を取り戻し、愚直に練習するチームに生まれ変われるか。

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