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vol.349-1(2007年4月23日発行)
葉山 洋 /マーケティング・コンサルタント

ファイトマネー

 “日本の野球選手は契約年俸とは別に「ファイトマネー」を受け取ることでモチベーションを高めている!”

 4月18日付けインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙の一面に載った記事である。

 一瞬、裏金問題が海外でも報じられているのかと思ったが、どっこい内容は違った。プロ野球選手が受け取る「監督賞」と呼ばれる金一封のことが語られていたのだった。

 米大リーグだったら如何に凄いプレーでも、監督は賞賛の言葉と握手で済ませるだろうが日本では違う。記事は井川、岡島、松坂とのインタビューを交えながら、監督賞の金額や内容、さらにはスポンサーからのさまざまな賞品を紹介する。

 一試合で用意されるファイトマネーの総額はせいぜい50万円。一人の選手が受け取る現金は10万円程度だ。キャッシュはチームのフロントが用意するのが普通だが「監督が自腹を切るケースもある」−と解説するニューヨーク・ヤンキースの井川は、現金ではなく(恐らく監督が家から持ってきた)高級腕時計をもらったことがある。むろん監督賞がないチームもある。ボストン・レッドソックスの岡島秀樹は、巨人軍時代はもらったことがあったが「日本ハムファイターズでは(監督賞は)なかった」と証言する。

 西武ライオンズにも監督賞はなかったようだが、スポンサー企業からの「賞」の提供を断っていたわけではない。松坂は、勝利投手賞として1ケースの缶コーヒーを受け取ったが「コーヒーは嫌いじゃないが、缶はどうも」ということで「ひとにあげちゃった」と告白する。スポンサーの担当者が聞いたら、さぞかしがっかりするだろう。

 「日本の野球界におけるちょっとしたこと」と記事は総じて好意的だ。昨今スポーツだけでなく、企業でも如何に社員のモチベーションを上げるか、という議論が盛んだ。どのような集団でも、集団が目指す成果を実現させるのは、構成員の努力の集積に他ならない。働きの悪いメンバーは不良資産なのだ。コンサルタントはとにかく「褒めろ」とアドバイスする。それが最も有効なのだ、と言うのだ。

 日本人メジャーリーガーたちは、ファイトマネーが人参のように鼻先にぶらさがっていなくても全力で闘い、好成績を残している。地元のファンの暖かい声援やフェアな評価が、きっとキャッシュ以上にモチベーションアップにつながっているのだろう。選手にとって最も重要なことは、パフォーマンスに対してファンから「褒められる」ことなのだから。

*ニューヨーク・タイムズの傘下の国際新聞。パリで発行されている。

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