スポーツネットワーク
topページへ
スポーツバンクへ
オリジナルコラムへ
vol.374-1(2007年10月17日発行)
賀茂 美則 /スポーツライター(ルイジアナ発)
前代未聞:大番狂わせ連続のアメリカ大学フットボール

 ここ、アメリカでは大学フットボールが大変なことになっている。3週連続の番狂わせで、ここ何十年間にわたって築かれて来た「秩序」が崩壊しかけていると言っても過言ではない。

 始まりは9月29日の土曜日だった。この日、全米トップ10にランクされている無敗の10チームのうち、何と5チームがシーズン初の敗北を喫したのである。フットボールは野球と違い、強いチームが順当に勝つことが多い。トップ10が安定していないシーズンの初めや強豪同士が当たる終盤ならともかく、中盤にさしかかった5週目にこんな事態が起こるのは前代未聞なのだ。さらに翌週、シーズン当初から1位にランクされていた「盟主」南カリフォルニア大 (USC)が全く無名のスタンフォード大に負け、トップ10全体でも4校が不覚を喫した。シーズン当初、スタンフォードの監督自らがUSCを、「本物のフットボール王国」と評していたのだからなにをか言わんやである。

 さらに翌週の13日、USCに代わって満場一致で1位にランクされたルイジアナ州立大(LSU)が17位のケンタッキー大に延長で負け、それまで2位で、順当に行けば1位に選出されるはずだったカリフォルニア大(バークレー)もランク外のオレゴン州立大に僅差で敗北した。同じ週に1位と2位が同時に負けたのは11年ぶり、シーズン中に1位チームが2度も陥落したのは7年ぶり、7週目にして、シーズン当初のトップ10チームすべてに黒星がつくという「記録」も樹立してしまった。

 14日現在、いわば「消去法」で残ったトップ3はオハイオ州立大(OSU)、南フロリダ大(USF)、ボストンカレッジ(BC)であるが、これはシーズン前なら考えられない組み合わせである。OSUは名門であるが、去年の王座決定戦で惨敗した後で主力選手が揃って卒業し、コーチ自ら今年は「充電」の年と位置づけていた。今シーズン、1位チーム3度目の陥落が見られる可能性も高い。2位のUSFに至っては全くの無名校で、強豪2校を破ったのでこの位置にいるが、フットボールの歴史はわずかに10年、1部に参戦してから7年しかたっていない。3位のBCに関しても似たようなもので、名門ではあるが、過去に目立った成績は残していない。

 アメリカでの大学フットボールと言えば、一昔前の日本のプロ野球のように、「国民的スポーツ」である。地域に密着したチームの人気はプロフットボール(NFL)をしのぐ。いわば、阪神タイガースや福岡ソフトバンクホークスが全国に散らばっているようなものだ。では、その熱狂的なファンが新聞記者やコーチの投票による毎週のランキングに一喜一憂するのはなぜであろうか。

 1997年まで、全米チャンピオンは投票によるランキングで決められていた。しかしながら、AP通信(新聞記者の投票)とUSAトゥディ紙(コーチの投票)のランキングが一致しないことがあり、全米王者が同時に2校誕生することがままあった。1998年のシーズンから、真の「全米王座決定戦」が行われるようになったのだが、全米が熱狂するこの試合への出場権は、未だにBCS(ボウルチャンピオンシップシリーズ)という複雑なランキングで1位と2位に選ばれたチームが得るのである。

 つまり、もし今シーズンが終われば、「王座決定戦」はOSUとUSFという顔合わせになるのだ。たまたま両校ともに無敗というだけで、共に1敗は喫したものの4位で踏ん張っているLSUと5位のオクラホマ大の対戦の方が「実力は上」というのが衆目の一致するところなのである。
 大学フットボールに関して、毎年言われていることであるが、王者を決める真の解決策は「プレーオフ」しかないのは誰もが認めていることである。アメリカでは、大学野球も大学バスケットボールも勝ち抜きのプレーオフで真の王者を決めている。フットボールでプレーオフが実現しないのは、週に1試合しかできないというこの種目の特殊事情があるのだが、もう一つの理由が「金」であるというのも衆目の一致するところである。

 シーズン終了後、冠スポンサーのついた「ボウルゲーム」という招待試合が30試合以上あるが、プレーオフが実施されると、準々決勝、準決勝、決勝の7試合以外の「ボウルゲーム」には誰も注目しなくなるというスポンサー側の事情がある。さらに、ファンの方も自分のチームが勝ち進むかどうかわからないので、チケットや宿泊の手配が事前にできず、さらに3週間連続でアウェー試合に行くのは金銭的、肉体的に大きな負担となるのだ。

 大学フットボールでの今年の無秩序状態が長年の懸案である「プレーオフ」実施のきっかけとなるかどうか、今シーズン後半の動向からは目が離せない。

筆者プロフィール
賀茂氏バックナンバー
SAバックナンバーリスト
ページトップへ
          
無料購読お申し込み

advantage
adavan登録はこちら
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望

Copyright (C) 2004 Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。  →ご利用条件