スポーツネットワーク
topページへ
スポーツバンクへ
オリジナルコラムへ
vol.363-2(2007年8月 3日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「チーム一筋は尊し」
(クーパースタウン新記録の熱狂はなぜ)

 7月29日、ニューヨーク州郊外のクーパースタウンで行われた今年度の野球殿堂入り表彰式に、会場のクラーク・スポーツセンターは新記録となる7万5000人のファンで埋め尽くされた。

 私も一度この会場で行われた表彰式を取材したが、博物館から約2キロの郊外にある、芝生の公園緑地だ。関係者に用意されている座席は6100席しかなく、大半の来場者は炎天下に立ち見で、式典を注視している。

 これまでの最多記録は、三振奪取王、ノーラン・ライアン投手ら3人が表彰された1999年の5万人。今年は予想をはるかに超える熱狂ぶりである。

 今季はともに、投票で97%以上の歴史的高支持を得たカル・リプケン内野手(オリオールズ)と、首位打者7回のトニー・グウィン外野手(パドレス)。2人に共通しているのは生涯他球団へ移籍していないことだ。2632試合連続出場の“鉄人”リプケンは21年間、グウィンは20年間も“チーム一筋”でプレーしてきた。しかも同時に表彰された、放送のデニー・マシューズさんは、カンザス・シテイで39年間勤続。記者のリック・ハメルさんもセントルイス・ポスト・ディスパッチ紙で37年間勤続。ともに地元一筋で働いてきた。

 表彰者4人がすべて、一度も移籍したことがない人々だったのは、史上初めてだという。地元の熱狂ぶりは先月から沸き起こり、ともに球場で壮行会まで開いたほど。この表彰式は、2人を愛して止まないファンで埋めつくされたのだった。

 「チーム一筋、ロイヤリティ(忠誠心)がいかに野球ファンのハートをつかんでいるかの証明だった。移籍の自由が認められ、FA制度が確立し、契約が終われば大金移籍は当たり前になった現在。ファンはわがチーム一筋に捧げてきた、スターをいかに愛しているかが良く分かった。リプケンは「これからは子供たちの育成に全力を尽くす」と涙ながらに語り、グウィンは「サンディゴにすべてを贈る」と話した。ハメルさんも「私は、カージナルスに人生を掛ける」とスピーチし、拍手を浴びた。今年の殿堂入りほど、すがすがしい思いをしたことはない。

筆者プロフィール
松原氏バックナンバー
SAバックナンバーリスト
          
無料購読お申し込み

advantage
adavan登録はこちら
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望

Copyright (C) 2004 Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。  →ご利用条件