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vol.376-2(2007年11月1日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「レッドソックスの優勝」

 レッドソックスは、ロッキーズを一気に蹴散らし、2007年のメジャー王座に着いた。2004年から2度目の優勝は、3年間を掛けてチームを再編成したフロントと、現場、ファン一体での輝かしい成果だった。その勝因は、4点が挙げられる。
@投手陣の整備A守備の強化B年間を通じてのファンの後押しC惜しみない投資。レッドソックスは、ヤンキースに2ゲーム差で、アメリカン・リーグ東地区の首位になったが、先発投手陣は、開幕からワールドシリーズ優勝まで、一貫して、完全にローテーションを守り抜いたことが大きい。ベケット、シリング、松坂、ウェイクフィールド、タバレス。この5人が、きちんと回転した。

 メジャー30球団で、開幕前の青写真通りに、先発投手が責任を果たした球団はほとんどない。

 ヤンキースは、開幕時点で、右腕エースの王が約2週間出遅れた。パバーノ、ライトも故障。投手陣のやりくりがつかず、4月下旬に7連敗し、スタートダッシュできなかったのが、最後までたたった。

 ローテを守っただけではない。ベケットは開幕7連勝。見事にエースの責任を果たし、松坂も何とかついていった。途中、疲れが見えると、新人を適宜はさみ、5人の回転はゆるがなかった。レッドソックスのチーム防御率3.87はリーグ1位。4点台を切ったのも、レッドソックスしかいない。中継ぎ、セットアップ、クローザーの役割分担もはっきりし、不安はほとんどなかった。

 ヤンキースのチーム得点力は、両リーグ最多の968得点。レッドソックスの867得点より100点も多い。これほど抜群の攻撃力を示したのに、777失点は、レッドソックスより120点も多いのが致命傷。「優勝に必要なのは投手陣」を、レッドソックスは裏付けたのだった。この流れはポストシーズンも続き、レッドソックスはローテを整然と守り、先発、救援陣も期待に応えた。

 2004年以降、レッドソックスは内野の整備を進め、今年は、ローウェル三塁手だけを残して内野を一新。その堅い守備は、リーグ2位の守備率でも示され、無用の失点を防いだ。ローウェルは、今季、自己ベストの打率.324(ベスト10の7位)120打点(リーグ5位)を挙げ、攻守とも期待をはるかに上回る好成績。ワールド・シリーズもMVPに輝く働きだった。フロントの再編計画は大成功だった。

 ボストン・フェンウェイ・パークは、年間完売の記録(297万755人)を作るほど、常に満員のファンがチームを励まし、選手を激励して支えてきた。驚くのは、レッドソックスのロードでの動員も両リーグ1位だったことだ。年間313万43人。300万人突破は、レッドソックスしかいない。両リーグ最多の427万1083人の新記録を作ったヤンキースでも、ロードの動員は及ばなかった。これは、人気があるからファンが来た、ということだけではない。いかに、ファンがボストンだけでなく、ロードにも同行して応援したか、を証明しているのではないか。

 松坂が、リーグ優勝最終戦、ワールドシリーズ第3戦で力投できたのも、ファンにもまれ、激励され、緊張の中で投げ抜いてきた強さが、この一番で現れたのだと思う。

 首脳陣は、松坂に大金を投資しただけでなく、スカウトの人材集めにも労を惜しまなかった。全米スカウト陣は、ポスト・シーズンのデータ収集に、半年も前から研究を重ね、エンゼルス、インディアンス、ロッキーズの攻略方法の分厚い資料を送り、これが優勝へ結び付いた。この部門で優秀だったのはヤンキースだが、レッドソックスは、ヤンキースを上回る経験深いスタッフを集め、成果を収めた。

 大金投資球団がことごとく敗れ去った今、あらゆる投資が無駄ではなかったことを証明したレッドソックスが王座に着いたのは、実に見事だと思う。

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