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vol.353-1(2007年5月23日発行)
岡崎 満義 /ジャーナリスト
石川遼少年の快挙と将来

 5月21日の日本ゴルフツアー機構(JGTO)理事会は、前日のマンシングウェアKSBカップで優勝した15歳の石川遼君の話題で盛り上った。ツアー初出場で初優勝、アマチュア選手の優勝は1980年、中四国オープンでの倉本昌弘以来、日本男子ツアーでは1977年、日本オープン優勝のセベ・バレステロスの20歳7カ月の最年少記録も破った。アメリカの最年少優勝は19歳10カ月というから、何もかも初ものづくしのような、まさに恐るべき15歳、としか言いようのない快挙だった。

 理事会では選手理事の宮本勝昌、深堀圭一郎、宮里優作さんたちも、何となく気落ちした感じで、他の理事が「何かゾーンに入ると、あんな奇跡のようなことが起こるんですよ」などと、なぐさめともつかないことを言ったりする。

 15歳の優勝をどう評価するか、各理事も胸中はいささか複雑な思いだったようだが、私は単純に喜んだ。とにかく、ここ数年、これという話題のない男子ゴルフ界に、世間をアッと言わせる新星が飛び出したのは、やはりおめでたいことだ。どことなく“ハンカチ王子”斎藤佑樹君をほうふつとさせる石川遼君のういういしさが、テレビ画面からよく伝わってきた。

 低迷をつづける男子プロゴルフのテレビ視聴率も、最終日は6.3%と、久しぶりに女子プロゴルフの5.9%を上回った。21日のスポーツ紙は、これまた久方ぶりに1面トップで大々的に報道された。

 22日の記者会見では、あこがれの選手タイガー・ウッズと戦うのが夢、と言いながらも「今のところ、プロ宣言は考えていない。ゴルフと勉強の両方、文武両道でがんばりたい」と、はっきり「文武両道」と言ったのは頼もしかった。アマチュア規定がオリンピック憲章から消えて30年になるが、もはや、スポーツだけではアマチュアはありえない。お金をとる、とらないに関係なく、スポーツだけのアスリートは、みんなプロフェッショナルだ。アマチュアは「文武両道」のライフスタイルを堅持するアスリートしか、ありえない。「文武両道」の「文」に、そのアスリートがどういう内容を組み込むか、「文武」にどんな意味づけをしてみせるか、にかかっている。

 そんな面倒なことを考えないで、プロに徹して高い技術を見せ、賞金を稼げばいいではないか、と言う人もあろうが、新しい時代の「文武両道」を見せることは、アスリートにとって大事なことだ。生涯スポーツ、見るスポーツという面から見れば、すぐれた「文武両道」のアマチュアが出現することには、これまで以上に大きな意味がある。多様なライフスタイルが模索されるからだ。

 石川遼君もいずれ、プロ選手として活躍するだろうが、「文武両道」のバランスのとれた青春時代を過ごしてほしいものだ。

 JGTO理事会でも、“金の卵”石川遼君を“酷使”しないよう、大事に育ってもらえる環境づくりに協力したい、ということになった。5月22日付の日刊スポーツには、早くも、「遼クン争奪戦」が始まった、とある。彼が出場する試合は、テレビ視聴率が上がるのは目に見えているから、どのスポンサーもノドから手が出るほどの「稀少価値」のあるプレイヤーだ。早くからこの“金の卵”をテレビ的に消費しつくさないようにしたい。若年燃えつき症候群にだけは、なってほしくない。

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