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vol.362-3(2007年7月27日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞大阪本社運動部記者
女性アスリートの取り上げ方がおかしい

 「オグシオ」の愛称で人気を集める女子バドミントンの小椋久美子、潮田玲子組の写真集が9月から発売されることになったという。驚きはこれを日本バドミントン協会が発表し、「公式写真集」と銘打っていることだ。

 小学館が発売する写真集は定価3000円。女優やアイドルのグラビアを手がけてきた渡辺達生氏が撮影するそうだ。競技の普及やイメージアップを狙う協会は「競技性」を尊重した写真集であることを強調しているようだが、プライベートショットもあり、というのだから、スポーツというよりは、美女ペアを対象にした写真集という印象はぬぐえない。競技団体が選手の公式写真集を発売するのは個人競技では過去に例がないという。

 それにしても、最近の女性アスリートの扱いがどうもおかしな方向に向かっているような気がしてならない。

 先日、電車の中で男性向けマンガ雑誌の中吊り広告が目についた。広告を飾っているのはビーチバレーの浅尾美和の水着写真だった。写真週刊誌でも頻繁に浅尾のグラビア写真が登場している。ビーチバレーの選手だから、当然水着なのだろうが、これもスポーツというよりは、アイドル的な取り上げ方であることは間違いない。トリノ五輪の時も、フィギュアスケートを中心とした選手たちが、美人タレント的な取り上げられ方をしていたことを思い出す。

 もちろん、こういう選手の写真を見たい購買層があるのだから、出版社が目をつけるのも理解はできる。しかし、今回は競技団体までもがその人気に乗ってしまったということだろう。

 1998年長野冬季五輪の時は、ドイツのスピードスケート選手がヌード写真を発表したことがドイツ紙で取り上げられていた。2000年シドニー五輪の時も、地元オーストラリアの女子サッカー代表がヌード写真集を発売したことが話題になった。海外の選手はそんなことまでして競技の注目度を高めたいのか、と感じたものだった。

 そうした波が少しばかり遅れて日本にもやってきた、ということなのかも知れない。そして、これに異を唱える人もほとんど見当たらない。スポーツ選手のタレント化は今に始まったことではないが、美人選手の人気を競技の発展と結びつけるのは、あまりにも短絡的な発想といえないか。トップアスリートの商品化はとどまるところを知らず、競技団体にも節度がなくなってきた。

 かつて、篠山紀信氏が撮影したスピードスケートの岡崎朋美の写真がスポーツニッポンに掲載されたことがある。岡崎の驚異的な太ももが強調されたものだった。さわやかな岡崎の笑顔からは想像もできない強靱な肉体と鍛錬の結晶が一枚の写真から伝わってきた。あれこそ、スポーツ報道写真だったと思える。今のスポーツ界は、そして社会は、女性アスリートをどう見ているのだろうか。

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