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vol.370-2(2007年9月21日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞大阪本社運動部記者
Jリーグのバランスシート

 サッカー・Jリーグが2006年度のJ1、J2の計31クラブの収支を発表した。今回からは各クラブの人件費も開示されており、総収入における選手の年俸がどの程度なのかがよく分かる。プロスポーツの経営にとっても興味深い数字がちりばめられている。

 そもそも、Jリーグのクラブを経営するには年間どれだけの費用が必要なのか。今回の資料を見ると、J1の1クラブ当たりの平均営業収入は、30億1900万円(前年度比2%減収)、J2は11億3900万円(前年度比29%増収)となっている。クラブ別で営業収入のトップはJ1浦和の70億7800万円。次いで横浜マリノスの45億5900万円、名古屋の38億100万円、磐田の37億1700万円、鹿島の33億8100万円、ガンバ大阪の33億6100万円となっている。最低は甲府の13億4300万円だ。浦和が突出して収入をあげているが、甲府も収入は少ないものの支出も抑え、1位の浦和に次ぐ2億4500万円の経常利益を計上した。

 ちなみにJ2の営業収入は柏が32億4400万円でトップ、最低は水戸の3億4100万円だ。つまり、J2の最低3億円からJ1の最高70億円までかなりの開きがあることも分かる。それが日本のプロサッカーの現状だ。

 サッカーを担当していた頃、横浜フリューゲルスの消滅に立ち会った。当時は他にも清水や平塚(現湘南)など経営難のクラブが相次ぎ、Jリーグのバブル崩壊がささやかれたものだった。その後、Jリーグは経営委員会を立ち上げ、各クラブの経営状況をチェックした。そうやって健全経営を促してきたのである。

 イタリア・セリエAを取材した時も、各クラブが経営難にあえいでいた。インテル・ミラノの幹部が「たとえ赤字になったとしても、選手の争奪戦にカネをつぎこまなければ明日はない。生きるか死ぬかだ」と話していたのを思い出す。クラブの支出の多くは選手の人件費に占められていた。それでも各クラブは競って巨額のカネを積み、スター選手の獲得に躍起になっていた。

 今回の数字を見ると、選手・チームスタッフ人件費でも浦和が24億9900万円でトップ。以下、名古屋や横浜マも20億を超える人件費をつぎこんでいる。J1の18クラブのうち、売上高に対して人件費が40〜50%を占めるのは10クラブ。50%以上は6クラブに及ぶ。近年はだいたい同程度の数字で推移しているようだが、Jリーグは「積極的な補強によるチーム人件費の増加を主因とし、収益状況が低下、経常赤字先が前年度の11クラブから15クラブに増加した」と分析している。

 最近は日本代表の人気も一時期に比べれば沈静化し、Jリーグの活気もさほど伝わってはこない。こんな時、各クラブの経営者はどう考えるか。かつてのセリエAのようにやみくもに選手争奪戦を繰り広げても、いずれは赤字経営に苦しむだけだろう。収入はあがらなくても、甲府のように着実に利益を出すクラブがある。地道な経営が各地のサッカー文化を支えることにもなる。Jリーグが開示する各クラブの収支状況は、冷静な経営判断をもたらす貴重な材料でもある。

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