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vol.413-2(2008年8月27日発行)
今城 力夫 /フォトジャーナリスト

「防具の色が作用する勝敗?」

 北京オリンピックも閉幕し、静かな日常を取り戻したかのようだ。華やかで豪華すぎるほどの素晴らしい開会式であったが、ライブの放映内容に一部CGが使われたり、歌を歌っていたはずの美少女は実は口パクだったりで、物議を醸す結果になったことには些かモラルの低さを感じずにはいられない。しかし政治的問題を別にすれば、全体的には素晴らしい施設とスムースな運営が出来たことは評価に値するような気がする。

 非常に残念でならないのは、消し去ることの出来ないことが選手側に起こったことだ。一つは14日男子レスリングのグレコローマン84キロ級の表彰式で銅メダルを獲得したスウェーデンのアラ・アブラハミアン選手が、その銅メダルをマットに投げ捨てたことだ。彼は当日の試合中の判定に対する不満をこのような形で露わにしたわけだが、理由はどうあれ大人げない行為だと思う。人間の目で見ながらの勝ち負けの判定には確かにミスも起こりうる。ミスは起こってはならないことだが、レフリーも一人の人間で、そのようなことが起こりうることを百パーセント排除することは不可能である。国際オリンピック委員会(IOC)は彼のメダルを剥奪し、3位の選手不在のままとなった。

 もう一つは23日に行われたテコンドー男子80キロ以上級の3位決定戦の判定に憤慨したキューバのマトス選手が、レフリーの頭に蹴りを入れ、国際テコンドー連盟から資格停止処分を受ける結果となったことだ。彼は試合中に足の負傷の手当を受けたのだが、その際に規定時間をオーバーし負けの宣告を受けたことに激怒したとのことだが、ルールを守らなければどの試合も成立しない。

 前置きが長くなったが、8月18日付のInternational Herald Tribune(IHT)紙の17ページに「Referees see red --- and see a winner」というタイトルの興味深い記事を見つけたので紹介したいと思う。この記事はテコンドーが始まる前日に掲載されたのだが、内容を一言でいえば「テコンドーの試合において赤色の防具(ヘルメットと胸当て具)を付けている選手は、青色防具よりも有利だ」ということだ。これはドイツの研究機関で試されたことだが、先ず同等レベルの男子選手5組にオリンピックと同じように赤色と青色の防具を着用してもらい、そのスパーリング・ラウンドのビデオを専門家に作成してもらった。そのビデオを経験豊かな42人のテコンドー・レフリーに見てもらい試合判定の依頼をした、という。選手には片方にオリンピックと同じように赤色防具を、相手選手には青色防具を装着してもらっている。レフリーたちは赤色防具の選手の方に13パーセント多いポイントを与えた判定結果が出たそうだ。次に同一のビデオ映像をデジタル操作によりそれぞれの選手の防具の色のみを逆に変更して、同じレフリーの方々に見てもらったところ、レフリーの判定結果は赤色防具(一回目は青色防具を着けていた)の選手たちの点数は増え、青色防具に変わった選手らの点数は減少した、との結果となった。結果の理由は示されていないが、もし防具の色の違いが明らかにテコンドーの採点に作用するなら、重大な問題だ。

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