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vol.429-1(2008年12月17日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「岐阜の再起は」

 サッカーJ2リーグの13位に終わったFC岐阜は財政難のため、人件費を切り詰め、若手中心の新メンバーで2009年の2年目シーズンに臨むことを決めた。Jリーグ理事会は12月16日の理事会で、苦しい経営難のクラブ救済へ、緊急融資5000万円を支出する。これは、Jリーグの公式試合安定開催基金としてプールされている予備費から借用するものだ。この融資を受けて再建したJ2草津に次いで、2チーム目になる。

 岐阜は今季から昇格したが、15クラブ中13位。第1クールでは一時、3位に上がったことがあったが、息が続かず、最終の第3クールは2勝9敗3分け。6連敗して13位に落ちる完敗だった。昇格前から背伸びしてプロ選手を集め、クラブ組織、体制が整わないまま、急いで上を目指した失敗が、未だに尾を引いている。すでに、累積赤字は3億円。今季の収入予算5億2000万円には、約1億円不足した。7月に8500万円の増資をしても、とても追いつかない大ピンチである。

 昇格とともに、大分、愛媛の創立当時、アドバイザーで協力した、広島の発足当時の役員で経営手腕のある今西和男氏をクラブ社長に招いて立て直しを始めたが、とてもすぐには再建はできなかった。岐阜の弱点はホームで全く弱い(3勝12敗6分け)ことだ。ホームで3勝しかできないのも、12敗も、J2ワースト記録。これでは、地元ファンを呼べないのは明瞭だ。今季の動員数はホーム21試合で7万8650人。平均3745人はリーグ・ワースト13位。

 岐阜はメイン・スポンサーがいない。ローカルの14社(ゴールド・スポンサー)と他のシルバー・スポンサー34社が支えており、他のクラブのような胸、背中、袖の広告大金支援スポンサーもいないままだった。

 今西氏は「フロント・スタッフも来年の給与は20%カット。ベテラン選手15人を解雇。12人の高校生、大学生の若手メンバーに切り替えて、数年後の上位を目指す」と、明らかにし、この多難な前途打開策をこう打ち明けた。「今シーズンの失速の原因を分析すると、長期構想のためには、新たなチーム作りが必要だ。今年スタートが良かったのは、ただ勢いだけだった。全員の気力、体力が盛んなときはいいいが、それでは長期シーズンは続かないことははっきりした。中心選手が70分間しか持たない。あとの勝つか、負けるかの瀬戸際の20分が大事なのに、そこで息切れして負けた。そのために1年間やれる、フレッシュなメンバーで勝負したい。今年と違って、最初はやられるだろうが、慣れてきたら途中からチーム一丸となって、道を開いて進めると、予測している。その構想に従って、クレバーで精神力があり、将来を見込める若者を選んだ。今は忍耐で再スタートするしかない。いつか上位を目指す。見ていてください」

 2009年のチーム平均年俸は350万円。全員が最低保障のC契約選手ばかりの集団で、クラブの年俸は9000万円(推定)の超緊縮予算になる。

 2007年度のJ2クラブ最低年俸は水戸の1億4000万円。いかに、岐阜の人件費の抑制が際だっているか、お分かりいただけるだろう。

 Jリーグの鬼武チェアマンは「Jリーグは岐阜を決して見捨てない。再起してもらうための融資なのです。クラブの努力でスポンサーを集め、立派にやれることを示してもらいたい」と、激励しているが、2010年にはホームの岐阜長良川競技場が全面改修で、約1年間使用できないピンチも待ち構えている。

 来季に新加入する栃木、富山、岡山のローカル3クラブも、財政危機の難問を抱えたままのスタートになる。岐阜が破綻せず、財政危機を突破できるか、みな見守っている。

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