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vol.429-2(2008年12月18日発行)

岡崎 満義 /ジャーナリスト
石川遼選手への期待

 桃(上田桃子)とさくら(横峯さくら)と藍(宮里藍)に話題をさらわれっぱなしだった男子プロゴルフが、今年久しぶりに活況を呈した。もちろん、17歳の石川遼選手の出現である。日本シリーズの最終日は、視聴率が14%を超すという、圧倒的な人気を見せつけた。もはやハニカミ王子ではない。怪物王子あるいは和製タイガー・ウッズ、というべきかもしれない。

 シーズン前、私は石川遼選手のプロ宣言に「?」という気持だった。理由は、文武両道というスタイル。アブハチとらずになるのではないか。プロ宣言したのなら、「武」=ゴルフだけにしぼるべきではないか、と思った。また、プロになるのは早すぎるのではないか。アマチュアのタイトルを独占してから、プロになってもいいのではないか。16、17歳といえば、体も心も発展途上にある。ほぼ毎週、4日間のツアー、プロアマ戦や練習日を入れると5、6日、ゴルフ漬けになるという日々がつづく。少年の体が悲鳴をあげるのではないか、と心配した。せっかくの逸材が、燃えつき症候群にならないか。さらに、20億円を越すと言われるCM出演、所属料など、目に見えぬ重荷にはたして耐えられるのか、数えあげれば、いくつも不安材料があった。

 ところが、その不安を完全に吹きとばしてしまった。シーズン後半は連戦の疲れで、ガタガタ崩れてしまうのではないか、と思っていたが、逆に尻上がりの充実ぶりを見せてくれた。しかも、得意のドライバーに強いこだわりを見せ、狭いフェアウェイでも小細工を弄することなく、ドライバーを使いつづけるという、プロ根性を見せた。シーズン中も人一倍の練習を欠かさなかった、という。練習も試合も、すべてが高いレベルでシーズンを通してつづけられた心身の強さに、ほとほと感心した。

 どうしてこういう恐るべき少年が出てくるのか。スポーツという世界は、ほんとうに不思議な世界だと思う。12年のブランクのあと、プロの世界に復帰、全日本選手権で優勝したテニスのクルム伊達公子選手とともに、石川選手は奇跡的な活躍だった。

 石川選手は来年以降、海外へ飛躍していくだろう。2年目のジンクスなどありそうにない。マスターズや全英オープンなどが舞台になるだろう。そこでどんな力を見せてくれるか、楽しみは大きい。イチローは50歳まで現役をつづけたい、と言っていたが、石川選手はどうなのだろうか。AON(青木、尾崎、中嶋)を超えるような選手になってほしいものだが、それには、よきライバルが必要だろう。孤高の天才では、長続きしない。尊敬できるよきライバルが出てくるかどうか。問題はそこにある。

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