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vol.398-3(2008年4月25日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞大阪本社運動部記者
プロ野球の「時短」と社会貢献

 日本プロ野球組織(NPB)が公式ホームページで連日、平均試合時間を掲載している。開幕から計146試合を終えた24日現在の平均は3時間5分。今年、NPBは「2008グリーン・ベースボール・プロジェクト」というキャンペーンを展開している。試合時間を短くすることで消費電力を減らし、二酸化炭素(CO2)削減による地球温暖化防止に貢献しようという話である。

 京都議定書に示されたCO2の排出削減目標の6%にちなみ、試合時間も6%短縮を目指す。過去10年間の平均試合時間は3時間18分。これを6%短くすると、12分マイナスの3時間6分になるのだという。今のところ、目標通りの効果が出ているようだ。

 この取り組みには伏線がある。地球温暖化防止とは全く関係のない話だ。昨年12月、放送各局からNPBの事業委員会(委員長・清武英利巨人代表)に対し、試合時間の短縮を求める声が挙がった。昨年はセ・リーグ3時間19分、パ・リーグは3時間18分。大半の試合が地上波の放送予定時間内に終了しない。このため、放送局は「何とかならないものか」とNPBに注文をつけたのである。

 日本テレビでさえ巨人戦を全て放送しなくなった今、地上波放送の枠組みの中ではプロ野球が必ずしも重要なコンテンツではなくなっている。1試合1億円が相場といわれた巨人戦の放映権料が、巨人だけでなく、他球団の財政も潤わせてきた。だからこそ、NPBが時間短縮に必死になるのもうなずける。

 中継に対する放送局の対応は依然ドライである。24日は阪神・中日、巨人・横浜戦が民放で放送されていた(関西地方)が、午後9時が迫ってくると、終盤の面白い展開にも関わらず、容赦なく放送を打ち切った。ちなみに春のセンバツ高校野球の平均試合時間は2時間6分。野球のレベルや試合内容を見ても同列に比較はできないが、プロ野球にはまだまだ削るべき余地はあるのだろう。

 こうしたビジネス上の背景も重なって持ち上がった「6%短縮」キャンペーンではある。試合時間を短くするための「11カ条」が掲げられ、ロッカールームや食堂に張り出されているそうだ。@スピードアップはプロ野球の価値を大きく高めるA1球で1秒の短縮は、1試合5分のスピードアップB投手は捕手からの返球を受けて15秒以内に投球Cバッターボックスは絶対に外さないD審判員の指示には素直に従う−−など。11番目には「遅延行為は、ファンに対する侮辱行為」とある。

 興味深いのは、各球団が単に試合時間短縮だけにとどまらず、環境問題にも積極的に取り組み始めた点にある。照明使用削減のため、デーゲームの増加を打ち出したのはロッテ、西武、オリックス、広島。ドーム内の冷暖房を控えているのはソフトバンクや日本ハム、中日。観客にエコバッグを配ったり、折れたバットで作った箸を食堂で利用したり。行政と提携し、啓発活動をしている球団も多い。野球をファンに見せることしか頭になかったプロ野球界が、社会貢献の意識を持ち始めたことは意義がある。活動の継続、浸透が必要だ。

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