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vol.426-2(2008年11月28日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者
サッカーくじ助成はこれでいいのか

 スポーツ振興くじ(通称・サッカーくじ、TOTO)が過去最高の収益を記録する見通しになっている。現在の売り上げ見込みは750億円。このうち、払い戻し金や経費、国庫納付金や借入金の返済などを差し引いた来年度のスポーツ界への助成額は76億円に達するという。今年度と比較すると約60億円もの増額だ。

 一時はくじの売り上げが激減した。昨年度の助成額はわずか8000万円にまで落ち込み、政府が廃止の候補にも挙げたほどだ。しかし、Jリーグの試合予想を必要とせず、最高6億円が当たる「BIG」という新商品が導入されたことで購入者が増加した。

 問題は、この収益が本当に意味のあるスポーツ振興に使われるのかという点だろう。今回、まず優先順位の最初に挙げられているのがグラウンドの芝生化。ケガの危険の少ない芝生の上で子どもたちがスポーツに取り組むことは決して悪いことではない。全国の学校の校庭が芝生化されていけば、学校スポーツの風景も変わるかも知れない。しかし、これがスポーツ環境を整備する上で最も優先されることとは思えない。

 26日には自民党のスポーツ立国調査会があり、ここでも議員からいろんな疑問の声が出た。その中でも興味深かったのは「もっと身近な地域スポーツにダイレクトに助成できないものか」という意見だった。

 議員からは、ミニバスケットや少年野球、少年サッカーなどの話が取り上げられた。手弁当のボランティア指導者や保護者の協力に支えられているのが青少年スポーツの実態であり、そこに金銭的な支援はほとんどない。文部科学省が進める総合型地域スポーツクラブの活動やクラブ創設に対しては助成がなされる。しかし、多くのチームは「総合型クラブ」の傘の下には入っていない。

 全国にあまたある青少年スポーツを直接支援するのはもちろん難しい。そこで国の方針に基づく「総合型クラブ」を支援しようということになるのだろうが、実態に即したものでなければ、実りのある助成にはつながらないはずだ。多額の遠征費用や道具費、公共グラウンドの確保、指導者の不足など、草の根スポーツが抱える課題は多く、それらは自助努力に委ねられているのが実情といえる。こうした問題を解消できる、まさに「身近な助成」が実現できないものか。

 くじの収益による助成がいつまで安定供給できるかも不透明だ。売り上げの額によって毎年のように助成内容が変わる状況は避けなければならない。くじの売れ行きが好調だからといって、スポーツ振興の多くを賄えるわけでなく、安定したスポーツ環境の整備には、くじに頼らない国庫からの補助が今後も不可欠だ。

 サッカーくじは確かに息を吹き返した。しかし、「儲かった、儲かった」と小躍りするのはくじの配当を受ける人だけでいい。運営側は助成の内容をきめ細かく検証し、スポーツ振興のあり方を見つめてほしいものだ。

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