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vol.469-1(2009年12月1日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「Jリーグ経営の危機」

 J1から2部へ降格した大分トリニータは債務超過5億6000万円、借金12億円の巨額赤字で事実上の倒産、Jリーグに資金提供を申し入れ、2010年1月まで6億円を借りて今後に備えたが、返済できるのか前途多難であることが明らかになった。

 大分は大手スポンサーもなく、ゼロから出発し、ナビスコ杯で優勝するまでに上昇したが、ローカルクラブで「身の丈に合う経営を」と、勧告されていたのに人件費がふくれ上がり、赤字が雪だるま式にふくらみ、ついにJリーグにすがらなければならない経営破綻に陥った。

 シャムスカ監督招聘に多額の資金がかかり、それに関連する人件費も含めて年間の運営費をはるかに超える支出になったのが致命傷となった。こうなる前にもっと早く、Jリーグは財政立て直しを勧告すべきだったが、余りにも遅すぎた。いまだに今後の方向を定める再建計画書も出せないピンチで、Jリーグが送り込んだ熊地洋二管理人が、現地で懸命に努力しているが、いつ道はひらくのか、見当もつかないありさまである。

 Jリーグはプロ野球と違い、J1の年間ホーム開催試合は17試合しかない。カップ戦の予選3試合を含めても年間20試合。J1の各クラブはチケット販売に努力しても、平均入場料収入は7億700万円しかない。あとの運営費は広告収入(スポンサー支援金)の平均14億8700万円に頼る経営で、もしスポンサーが撤退すればたちまちピンチになる、脆弱な運営なのである。これでは、背伸びして人件費を遣えば苦しくなるのは当たり前なのだ。

 大分はシャムスカ監督の年俸が1億円、選手の大半が複数年契約で、他のクラブは「いつか危なくなる」と注視していた。

 J2の東京ヴェルデイは親会社の日本テレビの撤退で、資本金も5億円を割り込み、2010年は果たして運営できるかも疑問視されている。Jリーグの公表したクラブ情報開示によると、2008年は経常赤字のクラブは、前年の7クラブから倍増の13クラブに増え、2009年は20クラブ以上になるのではないか、と憂慮されている。

 6億円もの巨額融資をして、返済期限も設けず、担保もなく、メドもつかないとは、普通の社会常識ではありえない。もし、大分がいつまでも返済できなければ、Jリーグの保有している公式試合安定開催基金(10億円)が底をつく危険さえある。

 財政基盤がしっかりしないクラブは、大分ばかりか、ローカル・クラブには多数ある。J2岐阜も5000万円をJリーグ安定開催基金から融資を受けたが、いまだに返済できず、2010年の7月までの返済期限付きでやりくりに必死なのだ。

 2010年は北九州がJ2に新たに加盟するが、「今季は経常利益がマイナスなので黒字にしてもらわないと困る」(鬼武健二チェアマン)と言われる見切り発車的な状態だ。

 J1は昨年、年間2回あった1節20万人動員も、今季は1回しかなく、昨今の不況では、レジャー費切り詰めの傾向は明らかだ。観客動員が落ち込んでいる今、まさにJリーグは最大の危機にある、と憂う毎日である。

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