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vol.445-1(2009年4月21日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者
東京は何をアピールしたか

 2016年夏季五輪の招致を目指す東京に対する国際オリンピック委員会(IOC)の視察が終わった。16日から19日までの4日間の公式視察で、東京は何を一番アピールしたかったのか。「半径8`以内に会場が収まるコンパクトな計画」や「環境への配慮」もあっただろうが、それらは最も強調したかった事柄ではないはずだ。視察の流れを見る限り、東京はやはり「カネが勝負」と見ているのではないか、という気がする。

 視察2日目の17日、日本オリンピック委員会(JOC)はスポンサー契約の締結内容を発表した。新たに設けた最高位の協賛社「ゴールドパートナー」として、アサヒビール、NTTドコモ、東京海上ホールディングス、トヨタ自動車、日本生命、ヤフーの6社と、それぞれ09年から4年間6億円の契約を結んだという話だ。

 JOCの担当記者なら「なぜこのタイミングで発表?」とピンと来たかも知れない。五輪関係のスポンサー契約は4月からではなく、1月から始まる。JOC側はこれまで一部を明らかにしただけで「正式に契約を結んでから」と最高位のスポンサーに関しては発表を随分と後回しにしてきた。ところが、IOC評価委視察のタイミングを見計らったかのように、東京五輪招致とは直接関係のないJOC協賛社を一斉に発表したのだ。

 翌18日のプレゼンテーションで、その狙いは明らかになった。JOCの竹田恒和会長は75億円のマーケティングに成功したことを明らかにした上で、「これまでは夏の五輪直前にブームが高まっていたが、今回はこの経済状況の中でもスポンサー契約が早々と(北京五輪時との比較で)75%まで達した」と自慢げにアピールした。このコメントは報道陣向けブリーフィングの際の発言だが、当然、海外メディアを通じて世界にも伝わる。日本の経済環境は安定しているという印象を与える戦略だろう。IOC評価委員にも同様の説明をしたはずだ。

 公式歓迎行事(16日)では麻生太郎首相が次のように、あいさつをしている。

 「まずは私が、日本国政府を代表いたしまして、揺るぎない決意をもって始めたいと思います。我々は、立候補ファイルにあるいずれのお約束も必ず守ります。我々は、すべきことは、必ずします。建てるべきものは、建てます。必要な資金は、手当します。これは、今、そして、2016年まで続いていく、我々の約束です」

 民間経済の安定と国家のバックアップを強調した東京の招致委員会。都も4000億円の基金を用意している。しかし、この国で開く五輪が、世界のスポーツ界にどう貢献するのか、スポーツを通じた視点からのアピールが少なかったのは全く残念だ。先進的な環境への取り組みを説明して、IOC委員からは「私たちは国連ではない」と交わされたというが、それもうなずける話だ。環境は地球にとって大切な問題だが、IOCがそれほど重視しているわけではない。

 IOC評価委のナワル・ムータワキル委員長は「計画はコンパクトで、ビジョン、コンセプトに大変感銘を受けた」と儀礼的な感想を述べつつも、具体的な評価は避けた。「慎重に検討したい。これから精査する」。そう言って、評価委のメンバーは成田空港を飛び立った。

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