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vol.452-1(2009年6月10日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者
日本代表戦、人気低迷の時代

 月曜の朝、テレビ朝日のワイドショーを見ていたら、まるで緊急ニュースが飛び込んできたかのようにキャスターが叫んだ。「ただいま、サッカー、ワールドカップ予選の日本対ウズベキスタン戦の視聴率の結果が入りました」。ビデオリサーチの調査によると、関東地区では平均視聴率は24・4%、瞬間最高視聴率は29・1%。午後11時5分開始の試合である。試合を中継したテレビ朝日にとっては気がかりだったのだろう。そういう事情を考えると、スポーツ中継としては決して悪くない数字だと、その時は思えた。

 ところが、インターネットでW杯出場が懸かった過去の試合の視聴率を調べたら、それらに比べて今回は大幅なダウンであることが分かった。「ドーハの悲劇」で94年アメリカ大会の出場を惜しくも逃したイラク戦(93年10月28日)はなんと平均視聴率48・1%、日本にとって初のW杯となった98年フランス大会出場を決めたジョホールバルでのイラン戦(97年11月16日)が47・9%、2006年ドイツ大会の出場が決まったバンコクでの北朝鮮戦(05年6月8日)が43・4%。今回はほぼ半減である。驚きの結果という他ない。

 視聴率だけではない。先日のキリンカップではチケットは完売したそうだが、かつてのように日本代表戦がプラチナチケットではなくなり、多くの試合で空席が目立つようになっている。

 原因は何か。ヤフー・ジャパンが今年1月末、サッカーの日本代表人気の低下について投票を実施している。投票総数2万5240票のうち、もっとも多かったのは「魅力ある選手がいない」で37%(9205票)。次いで「技術レベルが低い」が25%(6105票)、「強豪チームに勝てない」が15%(3582票)、「戦術がつまらない」が12%(2904票)という結果が出ていた。

このほど発刊された「スポーツアドバンテージ・ブックレット3 企業スポーツの撤退と混迷する日本のスポーツ」(創文企画)では、日本代表の不人気について、スポーツジャーナリストの白髭隆幸さんが「その大きな理由は、第一に人気選手の海外クラブへの移籍だ」と書いている。

 中田英寿に続き、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一、長谷部誠、松井大輔といった選手が次々と海外に出ていき、W杯予選ならともかく、日程的に親善試合ぐらいでは帰国するのが難しくなった。そうして海外組のいない日本代表戦が多くなり、ファンは敬遠するようになった、というのが白髭さんの指摘。私もこれには同感だ。

 ヤフーの投稿にはこんなものもあった。

 「マスコミと放送関係者が悪い。タレントを使ってミーハーを集めて視聴率を稼ごうとし続け、アナウンサーは実況じゃなくて絶叫するだけ、解説者は名ばかりで何も解説できない、そんなのを何年も続けてきたから誰も見向きをしなくなってしまうのだ」

 ウズベキスタン戦の夜、私は朝刊番のデスクだった。大きなハプニングもなく、紙面は計画通りに出来上がっていった。編集局全体が興奮するような、かつての雰囲気は感じられなかった。大ニュースの時に共同通信が各社向けに放送する「チャイム」も鳴らなかった。なぜだろう。サッカー日本代表の注目低下は、他の日本スポーツやスポーツ報道の在り方にもつながってくる話に思える。ちょっと議論してみたいテーマだ。

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