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vol.458-2(2009年8月7日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者
政権選択選挙にスポーツは含まれるのか?

 8月30日に行われる衆院選挙は「政権選択選挙」と呼ばれている。雇用や福祉、経済対策、地方分権など数々の議論のテーマがある中で、スポーツはどう扱われているのだろうか。各党が発表しているマニフェスト(政権公約)をのぞいてみた。

 まず自民党では「国家戦略としてのスポーツ・文化芸術の振興」として「スポーツ基本法」の制定と「スポーツ庁」の創設を掲げ、「トップレベル競技者の育成・強化や地域スポーツを振興する。2016年東京オリンピック・パラリンピックを国を挙げて招致する」と述べている。

 連立与党を組む公明党もスポーツ基本法とスポーツ庁の創設、「総合型地域スポーツクラブ」の拡充や障害者スポーツの振興などを挙げる。だが、両党とも、これまで掲げてきた方向性をなぞったものに過ぎず、スポーツ基本法とスポーツ庁に関し、国民が理解できる詳しい説明はないに等しい。

 一方、野党のマニフェストは拍子抜けした。民主党のマニフェストには「スポーツ」に関する記述は全くない。マニフェストの一次案として発表した社民党も同様にスポーツには触れておらず、国民新党にもスポーツのくだりはない。唯一、日本共産党が「国民スポーツの振興を根本に据えた計画推進」や「選手の人権尊重」「スポーツと自然との共存」などを主張しているぐらいだ。

 スポーツが選挙の大きな争点でないのは確かだが、党によっては数十枚に及ぶマニフェストを発表している。あらゆる分野が網羅されている中でスポーツが一言も触れられていないのはなぜか。与党が「スポーツ基本法」の制定や「スポーツ庁」の創設を打ち出しても、それに対する野党の反応がなく、議論の土台にも乗っていないのが実情といえる。

 しかし、スポーツ界に課題が山積していることは周知の事実だ。不況で大打撃を受けている企業スポーツを存続させていくには、どんな方策をとる必要があるか。一方で増加するクラブスポーツを発展させるためにどんな支援ができるのか。学校スポーツでは少子化と指導者不足が常に問題化し、連合チームを作らねばならないほど部活動の縮小が相次いでいる。子どものスポーツ環境も組織運営や指導者をすべてボランティアや保護者に頼らざるを得ない状況だ。子ども時代からの英才教育が必要か、それとも幅広い土台からトップ選手を育てていくべきか。国際競技力の向上も大きなテーマだ。

 もちろん、スポーツ界が自主的に克服していく必要がある課題だろう。だが、それをどうやって後押しできるか。政治家にはそんな議論もたまにはしてほしいものだ。トップスポーツを政治利用する時は積極的だが、それだけでは困る。

 政権交代の可能性が現実味を帯びる今回の選挙。しかし、最近、我々メディアやスポーツ関係者から聞こえてくるのは「民主党でスポーツ(の問題)を真剣にやっている人は誰なのか。顔となる人はいるのか」という声だ。選挙前なので、あまり偏ったことは書けないが、ビジョンが見えてこないのは、スポーツ界にはやはり心配事である。

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