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vol.527-1(2011年4月13日発行)
賀茂 美則 /スポーツライター(ルイジアナ発)
日本テニス界、新時代の到来

 日本のプロテニス界は、今、おおいに沸いている。
 
 まず、男子プロテニス、アメリカ・ヒューストンでの大会で弱冠21才の錦織圭が躍進した。日本ではあまりニュースになっていないが準々決勝では1番シード、世界ランク11位のマーディ・フィッシュ(アメリカ)を6-3、6-2で圧倒した。決勝では残念ながらやはりアメリカの新星、ライアン・スウィーティングに4-6、6-7の接戦を制されたが、錦織本人にとっては、2008年、予選から勝ち上がって優勝したデルレイビーチ大会優勝以来のツアー決勝進出である。
 
 肘の故障で2009年3月からほぼ1年間ツアーを欠場し、ランキングポイントがゼロに戻って以来のまさに完全復活である。筆者はちょうど1年前に復帰第2戦のチャレンジャー大会(下部ツアー)を生で見たが、まだおっかなびっくりで、ショットが思うように打てずにしきりに首を傾げていた自信なげな様子から、何とも逞しく立ち直ったものである。
 
 今回の準優勝でランキングも自己最高の48位まで上がり、日本人過去最高位、松岡修造の46位を破るのも時間の問題と言って良いであろう。所属するアメリカ・フロリダ州のニック・ボロテリ・テニスアカデミーが、チーム錦織につけた名前「プロジェクト45」も、すぐにその名前を変えなければなるまい。
 
 錦織が決勝で敗れたわずか2時間後、今度はブラジルから朗報が飛び込んで来た。こちらもまだ22才、伸び盛りの大型プレーヤー、伊藤竜馬のチャレンジャー大会優勝である。昨年、チャレンジャーで初優勝を含む2勝をあげ今回の勝利でこちらも自己最高の135位まで上がって来ている。
 
 忘れてはならないのが、現在90位でやはり自己最高の添田豪、26才である。3月にあった、中国、平果のチャレンジャーで見事優勝し、プロ入り8年目にして、日本をベースにしながら自己初の2桁順位という偉業を成し遂げた。この順位だと4大大会に予選なしで臨め、一気に飛躍が期待される。デビスカップの常連である添田は、伊藤の先輩にあたり、錦織とも仲が良い。現在の日本男子テニスプレーヤーに大きな刺激と相乗効果を与えていると言えよう。

 日本の男子テニス選手が2人も揃って2桁順位を取るということは、長年のテニスファンから見れば、隔世の感がある。錦織の前に2桁順位を達成したのは1990年代の松岡修造、その前となると、1976年の九鬼潤まで遡る必要がある。それが今や3人同時に2桁順位の可能性さえ十分にあるのだ。長年の添田ファンのブログによれば、この3人を除いて過去10年ほどの間に100位台に入った日本選手ですら鈴木貴男(1998年、102位)と本村剛一(2000年、134位)しかいない。日本勢でランク4位の杉田祐一が現在212位であることも書き添えておこう。
 
 女子選手に目を向けると、森田あゆみ(53位、21才)、クルム伊達公子(56位)、波形純理(108位)、土居美咲(123位、19才)、奈良くるみ(134位、19才)、瀬間詠里花(194位、22才)とさらに豪華であり、男子以上に若手の台頭が著しい。男女揃って日本テニス界は一気に新時代に突入した感がある。
 
 錦織と言えば、先々週マイアミで、世界第2位のジョコビッチと東日本大震災の被災者を援助するチャリティサッカーを発案して自ら参加したり、オークションをはじめとした募金・援助活動を展開するなど、社会的な活動でも知られる。日本テニス選手の目覚ましい活躍は、被災地にも多くいるテニスファンにとって何よりの励ましになるであろう。

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