スポーツネットワーク
topページへ
スポーツバンクへ
オリジナルコラムへ
vol.540-1(2011年10月3日発行)
賀茂 美則 /スポーツライター(ルイジアナ発)
日本男子プロテニス界、覚醒す

 日本の男子プロテニスが賑やかだ。ある長年のファンの言葉を借りれば「覚醒」した感すらある。一番のニュースは何と言っても、男子の国別対抗戦であるデビスカップ(以降「デ杯」と表記)での躍進であろう。

 9月16-18日に有明コロシアムで行われた入れ替え戦、日本はインドに4勝1敗で完勝し、1985年以来27年ぶりに16カ国からなるワールドグループ入りを果たした。特筆すべきは初戦のシングルスで相手のエース、格上のデバルマンに勝利した杉田祐一である。

 大方の予想に反して相手を圧倒した杉田はまだ23才。ワールドグループ復帰が決定した後も感極まっていたが、声を震わせながらのスピーチがまた素晴らしかった。「途中、足が痙攣してつらかったんですけど、応援の方々に『東北のみんなもがんばってるぞ』と言っていただき、胸が熱くなって覚悟が決まりました。まだ日本は大変ですが、スポーツの力が復興の手助けになるようにがんばっていきたいと思います」というものである( http://www.youtube.com/watch?v=7HZfrU9SZsQ )。震災で大きな被害を被った仙台市の出身であり、自らもチームジャパンテニスという義援金募集のチャリティを立ち上げている杉田だからこそできたスピーチである。

 杉田の闘志溢れる金星に続き、チームジャパンのエース、錦織圭がシングルスで2勝目をあげ、2日目のダブルスでは、杉田と伊藤竜馬のペアが世界のトップ10レベルのインドペアにあわやの試合をして士気を維持。最終日のシングルスで錦織が圧勝して勝負を決めてしまった。その勝ちっぷりは、チームジャパンの2番手である添田豪に消化試合以外活躍する場も与えなかったほどである。

 デ杯の躍進は決してまぐれではない。その2週間前、錦織、添田、伊藤の3人は揃って全米オープンの本戦に出場している。日本人の男子選手が4大大会の本戦に3人揃って出場するなど、数年前なら考えられないことであった。

 ランキングの方も、錦織47位、添田118位、伊藤130位、杉田175位(10月3日現在)、200位以内に日本人選手が4人という状況はここしばらく安定している。

 さらにデ杯の翌々週には、今度はATP(プロツアー)のアジアシリーズ、タイオープンで添田が準々決勝、マレーシアオープンで錦織が準決勝に進出した。テニスファンにとっては、同じ日に2人の選手の準々決勝を見られるというまさに夢のような状況が出現したのだ。

 さて、そのアジアシリーズ、今週は有明で楽天オープンが行われている。上記4選手は全員本戦に出場するが、添田は初戦で世界2位のナダルと当たるなど、伊藤以外の3人は初戦から強敵が相手だ。ランキングが上がるということはそれだけトップクラスの選手と当たることが増えるということである。より一層ステップアップするまたとない機会だ。

 チームジャパン4人の中で最年長の添田ですら27才、伊藤、杉田が23才、錦織はまだ21才。日本男子テニス界は、しばらく「黄金時代」を迎えるであろう。「覚醒」した感のある日本男子テニス選手たち、デ杯でのワールドグループ定着を手始めとして一層の飛躍を期待したい。

筆者プロフィール
賀茂氏バックナンバー
SAバックナンバーリスト
ページトップへ
          
無料購読お申し込み

advantage
adavan登録はこちら
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望

Copyright (C) 2004 Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。  →ご利用条件