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vol.537-2(2011年8月23日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「Jリーグの危機」

 プロサッカー・Jリーグは8月18日の理事会で、2010年度のJ1、J2(全37クラブ)の経営情報を公開したが、今やどのクラブも赤字に苦しみ、リーグ全体は深刻な経営危機に陥っていることが明らかになった。

 すでにこの経営危機は報道されているので繰り返さないが、驚いたのはこの難局を乗り越える戦略がないことである。リーグの大東チェアマンは「開催日に雨にたたられる天候不順と、世界的なドル安、円高、ユーロの金融不況が背景にある」というだけで具体的な打開策を示さなかった。

 しかし、リーグの試合が大幅な観客数ダウンになっているのは天候不順や、不況のせいだけではないはずである。ファンは見たいものがあれば自然に集まる。これはどのスポーツ興行も共通した流れであり、人を呼び寄せる努力が足りないのではあるまいか。

 MLB(大リーグ)は春先、寒さ、雨にたたられ、前途が危ぶまれる入場者減少だったが、今は白熱した優勝争いで昨年と同じ動員ペースを完全に取り戻している。これもMLBが球団と一体になった、ファンを誘うキャンペーンを連日続け様々のファン参加投票を行い、球場へ行こうの熱心な運動が実ってきた成果だ。

 Jリーグはこのようなファン参加をやっていない。その上、見たい選手はどんどん欧州へ去りJリーグは空洞化しつつある状態だ。見たい外国選手もやって来ない。試合は「残ればいい」という残留に主点を置いた試合が少なくなく、「もう一度来たい」思いが起きないのだ。

 J1リーグは最高でも16万人台(1週9試合)が4週あっただけで、1万人すら集まらない試合も、毎週1、3試合ある。魅力がなくなるといかに恐ろしい結果が待っているかがはっきり示されている。

 金メダル人気のなでしこを呼び、合同開催(変則ダブルヘッダー)にもトライしたらどうだろうか。女子なでしこリーグを傘下に持つクラブは、浦和、新潟、千葉、東京Vの4クラブがあるが、手をこまねいているだけなのだ。

 9月に入れば、なでしこ、五輪、W杯のアジア予選が集中し、テレビも新聞も予選に集中、Jリーグはさらに見向きもされなくなると予測される。今こそ危機打開へ立ち上がるべきではないだろうか。

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