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vol.543-1(2011年11月14日発行)

佐藤次郎 /スポーツライター

いったいこれは何なのか

 「ナーニやってんだか」というのが感想のすべてだ。清武英利・巨人球団代表は、渡辺恒雄会長の横暴を告発する記者会見で、いったい何をしたかったのだろう。少なくとも「義憤にかられて」とか「プロ野球を愛するあまりの決断」などとは受け取れない。

 「不当な鶴の一声で、巨人軍を、プロ野球を私物化するような行為は許せない」と清武代表は声明で述べている。確かに渡辺会長は、巨人という球団が、またプロ野球そのものが自分のものででもあるかのような言動を繰り返してきた。スポーツを愛しているとも思えないのに(このことは、これまでの言動ではっきりしている)、巨大メディアとその傘下にある人気チームの影響力を背景に、思うままに球界を牛耳ろうとする振る舞いは、ファンとして到底受け入れられるものではない。ただ、それはずっと前から続いていることだ。清武代表自身、そのワンマンパワーを後ろ盾として行動してきたのではないか。なのに、いまになって唐突に批判を展開した意図は何なのだろう。

 しかも、告発の理由として挙げているのは、チームのヘッドコーチ人事と、それをめぐる球団内部でのやり取りである。もしそれだけのことであるならば、それはつまり単なる内輪もめにすぎない。公の場に持ち出すようなことではない。それを「コーチや選手、ファンを裏切る暴挙」だの「基本的人権をないがしろにした」だのと言われても、聞く側はしらけてしまう。そこまで大上段に振りかぶるなら、プロ野球全体のために、もっと批判すべきことがあるだろう。多くのファンは、「何の意味があるのか、わけがわからない」と首をかしげているはずだ。

 それにしても、と、あらためて思う。横暴なワンマンと、意味不明な告発で世間を騒がす幹部とで成り立っている「球界の盟主」。そんなチームに振り回されてばかりの他球団。今回の騒動は、球界が持つゆがみ、ひずみを象徴するような出来事だという気がしないでもない。

 日本のプロ野球はもっと変わらなければならない、変わってほしいとつくづく思う。真の共存共栄を目指す態勢。健全なプロスポーツとして成り立っていくための経営感覚。将来を見据えたビジョンの共有。それらを実現するための人材の確保―。いまの球界に必要なこと、突きつけられた課題は山ほどある。なのに、ひとつも前に進んでいない。改革の牽引役も果たしていない「球界の盟主」の意味不明なゴタゴタなどに振り回されているひまはないのだ。今回の騒動に何か意味があるとすれば、そんなことをあらためて考えさせてくれたというところかもしれない。

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