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vol.550-1(2012年2月7発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「通訳に頼る甘さ」

 大リーグを目指す日本人選手はなぜ、通訳に頼るのか不思議でならない。
例えば、レッドソックスを解雇されヤンキースのマイナー契約でチャンスを得た岡島秀樹投手が、オーストラリアでの自主トレから帰国後「通訳附きの条件を得た」と言ったのには驚いた。通訳附きのマイナー選手などはいない。ラテン系の選手はみんな自分の言葉で懸命に意志を通じさせている。まず、英語を覚えるのが普通だ。岡島は2007年から丸5年もアメリカで投げているのに未だ満足に英語を使えないのはどうしてだろうか。普通アメリカで生活していれば、ほぼ1年で英語は理解できるはずである。アメリカで働くと決心した以上、現地の言葉を覚えるのは常識ではあるまいか。

 その点、今度レンジャース入りしたダルビッシュ投手は「子供のころから家では父は英語だったから耳は慣れている。今年中に自分で自由に話せるように努力したい」と通訳依存から自立する考えをはっきりさせているのはさすがだ。

 私ががっかりしたのは、2009年ヤンキースが優勝したときの松井秀喜外野手だ。ワールド・シリーズ第6戦、爆発的に打ちまくり1人6打点の快挙で日本人初のMVPを獲得したとき、表彰式でトロフィーを得た直後のインタビューは日本語。そのあとのマッハッタン・パレードもファンの歓呼に応えるのもやはり日本語。今度こそ、ナマのマツイの言葉を聞ける、と眺めていたファンをがっかりさせた。そのオフ、ヤンキースは契約延長の提示をせず解雇、エンゼルスへ去った。いまやキャンプイン目前になってもどこからもオファーは来ない。専属広報、通訳、トレーナーもつく「チーム松井」の環境にしてしまったため、彼が日本語でOKだったのは不幸だったのかもしれない。しかし、松井はもう9年間もアメリカにいるのである。

 近年、日本選手が成功しないのは「自分からどんどん飛び込まない、英語をマスターしない」のが背景にあると思う。英語会見の通訳を聞いていると「それはニュアンスが違う。こういう意味の質問をしたのに」と、合点がいかないことが数多くある。通訳を入れると、どうしても解釈の行き違いがあるのは否めない。「レッドソックスを見返してやる。引退を掛ける」と、岡島は意気込んでいるがそれなら他人に頼らず、自分で切り開く勇気を見せてもらいたい。ヤンキースは非常にシビアだ。通訳附きでないと何事も進まない手の掛かる選手では、いつ切り捨てられるか分からないではないか。自分のことはすべて自分でやる気がない人間は、アメリカ人の社会で成功はおぼつかない。

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