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vol.559-1(2012年12月17日発行)

滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者

選挙結果から考えるスポーツ界の今後

 衆院選は自民党の圧勝に終わった。原発、消費税、憲法など数々の争点が挙げられた中で、スポーツはほとんど話題にも上らなかった。だが、この選挙結果がスポーツ界にもたらす影響は少なくない。

 日本周辺の国際情勢を考えれば、尖閣諸島をめぐって中国との摩擦が起き、北朝鮮からは「人工衛星」という名の長距離ミサイルの発射実験が行われた。そして、日本には「憲法改正」や「自衛隊の国防軍化」を主張する安倍晋三氏による政権が誕生する。自民党の選挙スローガンが「日本を、取り戻す。」であったように、強い日本復活が次期政権のテーマになるだろう。

 以前、このコラムでも取り上げたが、安倍氏は2006年に発刊した著書「美しい国へ」(文春新書)でスポーツとナショナリズムの関係を次のように強調している。

 「国際スポーツ大会における勝ち負けというのは、国がどれほど力を入れるかで、おおきく左右されるものだ。勝つことを目標にかかげることで、それにむかって頑張ろうとする国民の気持ちが求心力のはたらきを得て、ひとつになる。社会主義国が選手の養成に多額の予算をかけて、金メダル獲得に意欲を燃やすのは、そうした理由からだ。だから『国の威信』をかける」と述べている。さらに「スポーツには健全な愛国心を引き出す力があるのだ」とも書き、ナショナリズムの高揚にスポーツが活用できるという考え方を示している。

 今後のスポーツ界は、こうした為政者の思想の影響を、いっそう強く受けるだろう。東京五輪招致活動はその延長線上にあり、トップアスリートたちは国の保護を受けながら、さまざまな形で利用されるかも知れない。自民党の政権公約には「スポーツ庁、スポーツ大臣の創設」が掲げられており、スポーツ界は今以上に中央集権的な色合いを強めていくに違いない。

 衆院選と同日投開票となった東京都知事選は、前石原慎太郎知事に後継指名された猪瀬直樹氏が難なく勝利を収めた。前知事時代から東京五輪招致を推進してきた猪瀬氏が知事に決まり、招致活動は来年9月の開催地決定に向け、予定通り進められる。その一環として、世論の支持を高めるためにこれからもアスリートたちが動員されるだろう。

 政治評論家の森田実さんのツイッターに「12月16日に行われる総選挙の第一の課題は平和主義を守ることである」「反戦平和主義を守り抜くことである。これこそが今回の総選挙の最大の国民的課題である」という書き込みがあった。 今回の選挙を通じ、多くの日本人が「戦争」や「愛国心」をかつて以上に意識するようになったのではないか、と感じる。

 日本のスポーツ界は五輪憲章にあるような「平和」の理念を貫き、世界の人々を結びつける役割をこれからも果たせるだろうか。それとは逆の方向に進む危険性はないだろうか。2012年末、選挙の結果を見ながら、そんな思いを強くした。

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