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vol.630-1(2015年4月9日発行)
岡 邦行 /ルポライター

原発禍!「フクシマ」ルポ―54

 ナイロビから500`離れているガリッサのケニア大学でイスラム過激派“シャバブ”が、多くの学生を射殺した。イスラム教徒だと言えば助かり、キリスト教徒だと言えば殺された―。
 先週の4月3日午前11時50分。ケニア・ナイロビ在住の小林俊一さんから、以上の内容のメールが届けられた。1時間後の午後1時のテレビニュースでは、147人の学生が射殺されたと報じた。正直、「またか!」と思った。世界中でテロが横行しているのだから・・・。
 その1週間前、ケニアに旅立つ前に会ったばかりの、20年来の付き合いの小林さんは、通称“ケ二ヤッタ小林”。日本陸上界の“闇の仕掛人”“陰のロビイスト”などとも呼ばれている。
 「まだあるね。“人買い小林”とも言われることもあるよ」
 そう言って苦笑する小林さんは、実に30年以上に亘りケニア人ランナーを日本の高校や大学、実業団チームに紹介。その日本で指導を受けた選手の中からは、オリンピックのケニア・マラソン代表選手に選ばれ、ダグラス・ワキウリ(ソウル・銅)やエリック・ワイナイナ(アトランタ・銅、シドニー・銀)、サムエル・ワンジル(北京・金)がメダリストになったことはよく知られている。その功績を見ても日本とケニアの陸上界の架け橋となっていることは事実であり、賞賛すべきだ。
 「いや、岡さんね、そういうと私に対しての風当たりが強くなるのよ。まあ、そんなことはどうでもいいんだが、私はまだまだ満足していないね。女性のメダリストを出していない。だから、2020年の東京オリンピックでは日本で指導されたケニア人女性にメダリストになっていただくこと。それが70を過ぎた私の夢、目標だね・・・」
 この春、小林さんは日大に男子、仙台育英高に女子のケニア人ランナーを留学させた。注目したい。

 その4月3日の午後、私は急いで解体中の国立競技場に出向いた。何故なら、こんな情報が寄せられたからだ。
 朝の7時半頃、解体中の国立競技場青山門辺りのゲートに乗用車が突っ込んだみたいだ―。
 正直、私は「まさか!」と思った。1ヵ月ほど前だ。解体中の国立競技場に爆弾を仕掛けたという電話があり、急遽作業は中止となり、四谷警察署が探知機で隈なく国立競技場敷地内を捜索したという話を、関係者から聞いていたからだ。もちろん、爆弾は仕掛けられていなかった。卑怯な愉快犯の仕業だろうか・・・。
 ともあれ、現場に行くと、通りかかった住民が教えてくれた。
 どうも居眠り運転の乗用車が曲がり切れずに縁石を乗り越え、フェンスに激突した。運よく怪我人は出ず、ジョギング中の人が目撃し、警察に通報した、と。現場の歩道には警察が検証したと思われる白墨で書かれた印が確認でき、フェンスは大きく凹んでいた。
 私は胸を撫で下ろし、いつものように解体中の国立競技場の周りを散策した。350dと400dの大型のクレーン車が出動し、とび職人たちによって先月半ばにはバックスタンドの高さ45bの照明灯、今週中には高さ50bの照明灯が解体される。これでもう国立競技場の姿は何処にも観ることはできないだろう。5月初旬からは隣接する日本青年館も解体されるという。

 午後6時半。私は反原発の首相官邸前集会に行き「再稼働反対!」「福島返せ!」「子どもの命を守れ!」などのシュプレヒコールを繰り返した。
 「もう4年も経つし、参加者は少ないんじゃないか・・・」
 よくそう尋ねられる。しかし、何人でもいい。声を上げることが大事なのだ。こんな例がある。官邸向かい側にある合同庁舎に勤務する40代のエリート官僚は、毎週金曜日夜の反原発の集会の抗議の声を聞き、国の原発政策に疑問を持ち、退職したという。声を上げる。それはプロテストの基本だろう。

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