東京オリンピックの観戦チケットの抽選結果が判明し、多くの人が観戦チケットを確保できなかったことに落胆した。と同時に、なぜ、こんなに当らないのか? という疑問をもったのではないか。
一番気になるのは、今回売り出された観戦チケットの枚数だ。組織委員会は販売戦略に関わるとして公表していない。しかし、抽選販売の申し込みが始まり、会場ごとに、どの競技・種目が、どんな区分で、何試合おこなわれるのか、いわゆる「セッション数」が明らかになった。各会場の収容人数をかけあわせることで、大会全体の観客収容数を試算できる。その結果は約1020万人。
ただし、大会時には、臨時のVIP席、記者席、そしてテレビカメラの設置などで相当数の観客席がつぶされることになる。よって、観戦チケット数としては、試算した収容人数の90%の約920万枚が適当だろう。
しかし、この約920万枚から、海外での販売分、大会役員・選手などオリンピックファミリー分、スポンサーが優先的に購入する分、公式旅行代理店による観戦ツアー分などを除く必要がある。過去のオリンピック、サッカーW杯などの国際的メガイベントでは、観戦チケット全体の半分くらいを占める。
これをふまえて、今回、売り出された観戦チケットは、最大で約460万枚と推測できる。
チケットの枚数を明らかにしない組織委員会だが、申し込みの締め切り段階で、申し込みに必要なID登録者が約750万人になっていたことを公表している。「いかに、東京大会に関心が高まっているか」というアピールと、「だから、なかなか当選しないんですよ」という言い訳のようだ。
この750万人という数字は、いくらオリンピックが好きな日本人とはいえ、あまりに異常ではないか。総務省の統計では、2019年6月の日本の人口は約1億2600万人で、15歳から64歳までが約7530万人だ。つまり、日本人の全人口の約6%、15-64歳の約10%が、パソコンやスマホを使って(もちろん、代わりにやってもらう場合もある)、ID登録をしたことになる。組織ぐるみで申し込んだり、1人で複数のID登録をして申し込んでいるケースが、相当多いだろうということは容易に想像できる。
仮に、このID登録者750万人が、ひとり10枚申し込んだとすると、当選の確率は、460万(推測したチケット枚数)÷7500万=約6%となる。実際の申し込みでは、競技・種目、席種、枚数などが複雑に絡むので、こんなに単純ではないが、はずれた人たちは、この約6%という数字に納得して、次のチャンスに期待するしかない。
組織委員会の観戦チケット販売戦略の方針として、(1)入場料収入の最大化、(2)なるべく多くの方、特に子ども、若者に観てもらう、(3)アスリートのために満員の熱狂空間をつくる、がある。
次の販売は先着順(早い者勝ち)になる予定だったが、さすがに組織委員会も2度目の抽選販売を検討しているようだ。より多くの人に観てもらうために、すでに当選した人には遠慮してもらって、今回、1枚も当らなかった人だけを対象とする抽選販売という方法も一考に値するだろう。
開幕まで、あと1年。チケットを買えなかったのに、「みんなで盛り上げていきましょう」なんて言われても、気持ちは萎えるばかり。組織委員会は、今後の販売方法も含めて、観戦チケットについて、もう少し明快な説明をしたほうがよいのではないか。
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