「批評性」「論評性」「文化性」の視点からスポーツの核心に迫る―スポーツ・コラム

尾崎和仁

VOL.783-1(11.7)
 東京五輪・自問自答(4)
 ラグビーW杯を活かすことができるのか


 ラグビーW杯日本大会を東京五輪にうまく活かすことができるだろうか。

 約40日間、日本中を熱狂させたラグビーW杯日本大会が終わった。
 ラグビーW杯日本大会組織委員会によれば、台風で中止になった3試合を除く全45試合の観客数が170万人以上で、1試合の平均観客数は約3万8000人。観戦チケットも販売可能枚数の99.3%にあたる約184万枚が売れた。単純に計算すると184万枚のチケットで170万人が来場したわけで、いわゆる歩留りが90%を超える、非常に高い参加率のイベントとなった。各地で行なわれたファンゾーンにも約114万人が集まった。テレビ視聴率も、準々決勝の日本対南アフリカ戦(NHK総合)が40%を超えるなど、軒並み高い数字を記録した。
 世界一を争う高いレベルで、ラグビーという競技自体のもつ魅力が十分に披露されたこと、日本代表が初めてベスト8に進出したこと、さらに日本人のイベント(お祭り)へのノリの良さが加わった結果だろう。

 このラグビーW杯の盛り上がりの裏でも、東京五輪組織委員会は、この夏からのテストイベントをこなしていた。当初は猛暑や海の汚れなどが話題になったが、その後も、粛々と進められている。
 テストイベントは全部で56回の予定で、(1)競技団体などが主催している、もともと予定されていた大会、(2)組織委員会が主催となり、まさに東京大会の予行練習として実施する大会「READY STEADY TOKYO」、の2種類がある。
 IOCと東京都、JOCとの間で結ばれた「開催都市契約―大会運営要件」によれば、テストイベントは「会場と運営、特にフィールドオブプレイ(FOP)、テクノロジー及び特定業務のスタッフをテストする目的で」実施することになっている。競技自体をスムーズに進められるかどうかのテストなので、上記(2)の組織委員会が主催する「READY STEADY TOKYO」は、いわゆる無観客試合となっている。競技会場に大観衆を迎えたテストができない東京五輪の組織委員会にとって、ラグビーW杯は絶好のテストイベントだった。

 ラグビーW杯では、多くの外国人サポーターが来日し、日本人のなかには、いわゆる「にわか」ラグビーファンが多かった。大会の序盤では、観客輸送のトラブル、場内売店でのフードやドリンクの不足などによる混乱が発生していた。外国人や観戦初心者が多かったことが、混乱を大きくした面もあっただろう。ただし、大会運営側の対応も早く、大会の中盤以降はスムーズになっていたようだ。とはいえ、ビールの飲み過ぎが原因と思われるトイレ待ちの長蛇の列は解消できなかったが・・・。
 東京五輪でも、世界中からの多くの外国人観客と、「オリンピックだから観たい」という「にわか」スポーツファンへの対応をしなければならない。
 台風の影響で試合が中止になったことも、あらためて五輪の準備に緊張感をもたらした。
 試合中に観客をあおる歌舞伎の掛け声や三々七拍子などには違和感があったが、外国人には受けていたのだろうか。この演出の中心には豪州のイベント会社Great Big Eventsがいた。GBE社は、電通とともに、東京五輪の各競技会場の演出を担当することが決まっている。

 東京五輪という国際的なメガイベントの運営にとって、ラグビーW杯日本大会は、さまざまな面でおおいに参考になったはずだ。ラグビーW杯も東京五輪も、「親分」は森喜朗氏だ。その森氏のもと、2つの組織が情報共有をし、東京五輪のテストイベントとしてのラグビーW杯の現場検証の結果を、東京大会の運営に活用してほしいところだが、はたして・・・。
 こんなことを考えていたら、ラグビーW杯組織委員会から観戦チケット購入者へのアンケート依頼のメールが届いた。調査を委託されたEYアドバイザリー・アンド・コンサルティング社は、つい先日、東京五輪のオフィシャルサポーターになったEY Japan社のグループ会社である。
 たしかに、ラグビーW杯と東京五輪の両方に関わる企業・団体は少なくない。ラグビーW杯日本大会を東京五輪に活かすことができるかもしれない。

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