「批評性」「論評性」「文化性」の視点からスポーツの核心に迫る―スポーツ・コラム

桂川 保彦/元帝京平成大学教授

VOL.785-1(5.12)
 スポーツクラブ経営は危機的状況下で生き残れるか
  ~スイミングクラブ産業の現状について~

 2月に、新型コロナウイルスの国内感染が全国に拡大した影響は、スポーツ産業全般にも及び、経営基盤が大きく揺らいでいる。それらについて何回に分け現状と課題を示しながら、脆弱なスポーツ産業の建て直しへの提言としたい。
 第1回はスイミングクラブを取り上げる。
日本の民間スイミングクラブは、1964年の東京オリンピック大会以降、今日まで54年間わたり全国各地に広く普及し、ベビーから高齢者まで老若男女を問わず、健康増進とクラブライフを提供してきた。なかでも、スイミングクラブは当初の目的とおり、競泳の選手強化とその推進に取り組み、世界トップレベルの水泳ニッポンを支え、五輪代表は全員がクラブで発掘・育成されていると言っても過言ではない。
 この背景には、戦後の文教政策により川・海・湖などにおける水難事故防止を主たる目的とした体育正課への導入が図られ、公立小中学校全てにプールが設置されたが、屋外施設のために夏場の1ヶ月程度しか利用できないことによって、学校プールは競泳強化の場とはならなかったことがある。また、指導教員のスキル向上が進まず、そのマンパワーも払底していたことあり、結果としてスイミングクラブが競泳強化の代替機能を果たしていることも周知の事実である。
 毎年文科省・笹川スポーツ財団・民間教育研究等の調査に拠れば、習いごとランクでは20年以上連続で、水泳がトップである。加えて、世界最速のペースで推移する少子高齢化社会における余暇活動として、健康増進目的で定期的に行う水泳が普及している。一方で社会生活基本調査によるとスポーツ行動者数の推移において減少の一途を辿っている。但し、行動日数においては2倍に増加していて、水泳人口全体は減少しているが、利用頻度が増加していることが見て取れる。
 こうした社会変化に適応しながらクラブ経営は成長を遂げてきた。業界団体の一般社団法人日本スイミングクラブ協会加盟クラブは平成29年時、1107を数える。プラスして公共施設の指定管理制度による水泳関連事業において増加が見られるので、産業として成熟期に位置するものと認識出来る。競技・普及両面で日本を代表するスポーツ産業のスイミングが、今般の新型コロナウイルス蔓延により経営基盤が大きく揺らいでいる。次週はその実態を報告する。


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