「批評性」「論評性」「文化性」の視点からスポーツの核心に迫る―スポーツ・コラム

岡 邦行/ルポライター

VOL.738-1(12.5)
 原発禍!「フクシマ」ルポ-98

 1日目指せ、8000歩以上!
 65歳過ぎて高齢者の仲間入りした頃から、自宅にいるときは自身に散歩を科している。理由? 言いたきゃないけど少しでも健康で長生きしたいためだ。買い物がてらに散歩することもあり、先日は顔見知りのオヤジがやっている八百屋に寄ると、店頭に「手作りの自家製干し柿280円」を見つけた。
 「手作りだよ、足も頭も使っていない本物の干し柿だ。2個で280円、お買い得だよ。ねっ、買いなよ・・・」
 そう言って売り込むオヤジを笑いつつ、1句浮かんだ。
 原発禍の街 柚(ゆず)柿たわわ 7年目・・・

 少年時代の今頃の時季、私は軒先に縄にかけてぶら下げられた柿、地元で言う〝あんぽんたんの吊るし柿〟を眺め、ときには干し柿になるのを待ち切れずに食べたものだ。しかし、それは遠い昔の話になってしまった。原発事故後は軒先に干し柿をぶら下げた光景は見られない。
 4年前、干し柿の産地である伊達市に行った際、地元の人は嘆いていた。
 「1キロ当りの放射性物質の線量は約30ベクレルで基準値(100ベクレル)以下だが、干し柿にすると重量が減り、逆に放射性物質は100ベクレルを超えてしまい、出荷することができない・・・」
 生活の糧だったたわわに実る柿も熟して落ちるのを待つだけだった。
 柚も同じだ。私の実家の庭には直径20センチはあると思われる柚の木があり、毎年100個以上もの実が成った。だが、この7年は眺めるだけで昨年冬に逝った母の言葉が虚しい。
 「桃栗3年柿8年、柚の馬鹿野郎18年。せっかくここまで育てたのになあ、原発の大馬鹿野郎め・・・」

 昨日(4日)の毎日新聞朝刊社会面に「IOCに被災地食材 組織委夕食会でPR」のタイトル記事が載った。
 記事を要約すると―。20年東京オリ・パラの組織委員会は復興庁の協力で、12日に予定されているIOC(国際オリンピック委員会)との夕食会で3・11の被災地3県(岩手・宮城・福島)の特産品を振る舞う。とくに原発事故への懸念が強いと言われる、福島県産品の安全性や東北の豊かな食材の魅力を伝える。復興庁は11月に被災地とオリ・パラを結びつけるために新たに「復興五輪推進チーム」を創設。選手村での食材活用や復興のPRイベント開催などをする。土井亨副復興相は「組織委が早くからPRしてもらえることは大変ありがたい。風評被害を解決する一助になってほしい」と話している・・・。
 という内容の記事だが、それがどういった意味を持つのだろう。早い話が、被災地の食材を少しだけ使い、庶民が口にできない料理をご馳走。組織委はIOC委員に「復興五輪」をアピールしたいだけではないか。福島在住の知人は怒る。
 「そんなに復興オリンピックをアピールしたいんなら、IOC委員のお偉方をフクシマに案内し、爆発した原発の現状を見せればいい。それを見て彼らはどう判断するかじゃないのか・・・」
 原発禍の街で暮らす、住民の多くはそう思っているのだ。


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