田臥勇太が日本人として初めてアメリカに立ったプロバスケットボール選手と思っている方には衝撃の一冊です。私もそのうちの一人です。長年、アメリカでNBAを見てきて、スポーツビジネスの世界で生きて行こうとしている身としては、読んでおかないといけなかったものがこの『日系二世のNBA〜伝説のプレイヤーワッツ・ミサカとその時代』だと感じています。
この本は、バスケットボールというスポーツだけを求めて読む方にはつまらなく、スポーツ以外の面を求める方にとっては盛りだくさんの一冊になっていると思います。大学バスケットボールの歴史的背景やスポーツ界の人種問題などが多く含まれているのですが、それ以上にこの一冊には「日系人」というテーマで、第二次大戦中にアメリカという国で生き抜いた人々の人生、とその時代に全米王者となったワッツ・ミサカという人物、が大きく取り上げられています。
ここには様々なメッセージが含まれています。今、裕福な時代に生きているはずなのにすぐ妥協をしてしまう若者や、日本のスポーツは世界に通用しないと感じている方々にとって、三阪亙の人生とはお手本のようなものであるかもしれません。日系人にとっては普通に生きていくのにも辛い時期だったはずなのに、自分が活躍することで日系人が認められるという意識をもってコートに立っていた彼は、パイオニア以上の存在かと思います。私も現在アメリカの大学でスポーツマネージメントを勉強しているのですが、日本人があまり多い地域でないため、時代や環境が全く違うにせよ共感できる部分は少しですがあります。
日本のバスケットボールが世界に通用しないと諦めている人にとって彼のプレイは、今後日本バスケットボールが世界に向けて対抗していくための見本となるのではないかと思います。戦争の真っ只中に、アメリカでは敵として見られてもおかしくない日系人の彼が、マディソン・スクエアガーデンという大舞台で全米のバスケットボールファンに認められたそのプレイは、現在世界を目指している日本人プレイヤー達は参考にすべきでしょう。
私もスポーツビジネスの世界を目指すに当たって、様々な逆境が訪れると思いますが、田臥選手や伝説のプレイヤーであるワッツ・ミサカさんのようにそういった舞台へチャレンジしていく気持ちだけは忘れないでいようと思いました。様々なことを教えてくれるこの一冊は、スポーツファンだけでなく全ての人におススメです。
|