第30回ミズノスポーツライター賞発表(2019年3月5日)
■2019年度 第30回 ミズノスポーツライター賞 受賞作品
スポーツメントール賞はしばらくお待ちください。
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「2019年度 ミズノ スポーツライター賞」受賞者決定
公益財団法人ミズノスポーツ振興財団では、1990年度から「ミズノ スポーツライター賞」を制定しており、2019年度で30回の節目を迎えます。この賞は、スポーツに関する報道・評論およびノンフィクション等を対象として、優秀な作品とその著者を顕彰するとともに、スポーツ文化の発展とスポーツ界の飛躍を期待し、これからの若手 スポーツライターの励みになる事を願い制定したものです。
3月5日(木)、グランドプリンスホテル高輪で選考委員会を開催し、受賞作品および受賞者を以下の通り決定いたしました。
なお、この「ミズノ スポーツライター賞」の表彰式は、4月21日(火)にグランド プリンスホテル新高輪で行います。
■最優秀賞 (トロフィー、副賞100万円)
『国境を越えたスクラム』-ラグビー日本代表になった外国人選手たち―
国境を越えたスクラム-ラグビー日本代表になった外国人選手たち (単行本)
山川 徹(やまかわ とおる)(発行:中央公論社)
【 選 評 】
2019年ラグビーW杯は日本代表の活躍で大変な盛り上がりをみせたが、一般人の中には チームに多くの外国人選手が含まれていることに戸惑う向きもあった。本書は、外国人選手の参加が一朝一夕に成ったのではなく、日本ラグビーの歴史そのものが生み出した事態であり「国境を越えたスクラム」こそ時代の要請であることを、著者の自分史とも重ね合わせて展開している。
フリーライターとして日本国内の「国際化の現場」を取材する機会が多かった著者は、日本で働く外国人がまだ少なかった時代から外国人選手が日本代表になっていたラグビーを「目指すべきダイバーシティの一つのモデル」、「ラグビー日本代表のあり方に、これからの日本社会が歩むべきヒントが隠されている」と考え、取材を始めた。
ラグビーにはさまざまな戦法があり、作戦の選択においてもフォワードとバックスの連係や対戦相手の分析に基づく「読み」が必要で、ポジションごとにそれぞれのチームへの献身のしかたが異なる。そこでは国籍という資格や選手を国籍で区別することはあまり意味を持たない。2019年W杯で、建前上「多様性」という見栄えのよい言葉を掲げた代表チームが、実際に ゲームのなかでその「多様性」をみごとに機能させ、チームワークに昇華させていた姿に、 ラグビーは日本社会の国際化を象徴するスポーツだとする著者の指摘は説得力をもって重なる。
多くの選手たちへのインタビューをもとに、ラグビー大国からやって来て日本に融け込み、日本のラグビーを変えてきた外国出身選手たちの貢献を浮かび上がらせた労作と言える。
初版が出たのはW杯開幕前で、代表チームの大活躍を予見するかのような本書は、タイム リー性にも恵まれた。
■優秀賞 (トロフィー、副賞50万円)
『那須雪崩事故の真相』-銀嶺の破断-
那須雪崩事故の真相 銀嶺の破断
阿部 幹雄(あべ みきお)(発行:山と渓谷社)
【 選 評 】
2017年3月、栃木県那須岳の中腹で、「春山安全登山講習会」に参加して訓練中だった高校生の一団を雪崩が襲い、高校生7人と教員1人が死亡、40名が負傷するという大惨事が起こった。
本書は「雪崩事故防止研究会」の代表を務める著者が事故の全容とその原因を徹底して突き詰めて書かれている。著者自身が1981年、中国四川省のミニャ・コンガで8名が滑落した遭難の生き残りであり、その後、今日まで遺骨の捜索と収容や遺族の訪問を続けている。その思いを土台に雪崩事故の真相に迫る著者の筆致は執拗かつ詳細であり、読む人を粛然とさせる力を持っている。
極めて専門的で難解な解説がいくつも示されるが、仮にそれ等を理解しなくとも著者が丁寧に事故の真相に迫ろうとしているのはよくわかる。著者以外の山岳の専門家の分析も含め、感情論を抑え、あくまでも科学的に雪崩事故にアプローチしている。雪崩についての科学的な分析、生徒たちの当日の行動についての追跡と推論という客観的な叙述に加えて、親や生徒たちの肉声を記録した人間味のある記述にも多くのページが割かれている。本書全体に、ほとんど見開きごとと言っていいくらい現場の写真や説明図が配されて読者の理解を助けてくれる。事故の全貌をできるだけ正確に読者に伝えたいという著者の熱い思いが伝わってくる。その背景に著者のミニャ・コンガ体験が深く根を下ろしていることが読み取れる、良心的な一冊である。
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主催:公益財団法人 ミズノスポーツ振興財団
選考:ミズノ スポーツライター賞選考委員会 [主旨] スポーツが巨大なメディアそのもとなった今日、世界の国々、地域、民族が分け隔てなく、共通のルールで価値を創造し共有できる文化は、スポーツをおいて他に見当たりません。 バンクーバー冬季オリンピック大会、サッカーW杯南アフリカ大会、いずれの舞台でも、肉体のもつ能力の可能性が未来に向かって切り拓かれました。世界の人々の魂を揺さぶる人間的なドラマも現出しました。スポーツはどんな状況にあっても、子どもたち、若者たちが夢をふくらませ、それを叶えられるフィールドとして価値ある存在であることがあらためて確認されたと言えるでしょう。
スポーツをテーマに「書く」ということは、スポーツの世界で繰り広げられる多種多様な事象を、読む人の心にいきいきと甦らせることのできる高度の娯楽性を基盤に置きつつ、客観的な報道性(記録性)と時流に迎合しない批評性を併せ持った文章によって、人々にスポーツの真価を伝えることです。それはスポーツの文化性をより高めるために必須の営みだと言えます。
今年度で30回目を数える「ミズノスポーツライター賞」は、「スポーツの世界を文字で描き伝える」スポーツライターの業績を顕彰するわが国唯一の賞として、その価値と使命がいよいよ大きなものとなってきています。本年も21世紀のスポーツ界とスポーツ文化のさらなる発展に寄与することを目的として、スポーツ報道とスポーツ・ノンフィクションに関する優秀な作品を広く公募いたします。
[対象領域]
【2019年1月1日~12月31日】に発行・出版・発表されたもので、主として新聞・雑誌・単行本等に掲載された個人もしくはグループで書かれたスポーツ報道、スポーツ評論、スポーツノンフィクション、など。ただし、インターネット上のウエブサイトなどで発表されたもの、社内報や広報誌等一般に販売されていないもの、一般の者が入手不可能な機関誌的なもの、翻訳書や専門学術書・誌、研究紀要等に掲載されたいわゆる学術論文はこの対象からは除く。
[表彰内容]
★最優秀作品 1本 (トロフィー / 賞金100万円) ☆優秀作品 2本 (トロフィー / 賞金 50万円)
[選考委員]
委員長 | 河野 通和 | (株)ほぼ日「ほぼ日の学校長」、『中央公論』『婦人公論』『考える人』元編集長 |
委 員 | 上治 丈太郎 | (公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 参与 |
| 杉山 茂 | スポーツプロデューサー/元NHKスポーツ報道センター長 |
| ヨーコ ゼッタ-ランド | スポーツキャスター |
| 高橋 三千綱 | 芥川賞作家 |
| 水野 英人 | (公財)ミズノスポーツ振興財団副会長 |
※敬称略・順不動
[ 応募要領 ]
作品の主旨および筆者名(担当記者)あるいは担当班とそのメンバー名、連絡先を記載の上、新聞・雑誌は作品のコピー3セット(A4サイズ/必要に応じて他サイズも可)、書籍は3冊を同封の上、お送り下さい。応募に際しご不明な点がございましたら選考事務局までお問合せ下さい。
●締め切り(消印有効):2019年1月7日(月)必着
●発表 :2019年3月5日(水)
●表彰式 :2019年4月21日(火)グランドプリンスホテル新高輪
【お問い合せ先】
「ミズノ スポーツライター賞」選考事務局
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-16-15 代々木フラット401 スポーツデザイン研究所内
TEL:03(3377)4858 / FAX:03(3377)5028
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